Tuesday, October 23rd, 2018

マーティン・フリーマン ロングインタビュー
‘IT’S THE CLOSEST I’LL EVER GET TO BEATLEMANIA’

text nick scott photography simon emmett fashion and art direction sarah ann murray

シャツ ¥13,000 Brooks Brothers
ニットタイ 参考商品 Ralph Lauren Purple Label
ウール×カシミアのポケットチーフ Anderson & Sheppard Haberdashery
靴「ハーバード」 参考商品 Crockett & Jones
スリーピーススーツ Mark Powell 本人私物

『ラブ・アクチュアリー』(2003年)でジョアンナ・ペイジと。

『恋愛上手になるために』(2007年)でペネロペ・クルスと。

『ワールズ・エンド 酔っぱらいが世界を救う ! 』(2013年)でニック・フロスト、エディ・マーサン、サイモン・ペッグ、パディ・コンシダインと。

幸せとは普通であること

 安易な誇張表現を軽蔑するマーティン・フリーマンだが、仕事上のポジションとしては今非常に良いところにいる。それは、ここまで読んでくれた読者ならご存じのとおりだ。このアルダーショット出身の44歳の男が一番に求めているものは普通っぽさだというのに、彼のキャリアは熱圏にまで達しそうな勢いで伸びていき、彼の理想からは離れる一方だ。幸せとは、自分の人生がもはや普通じゃないと分かっていながら、普通の人たちがするようなことをしていることだと彼は言う。
「実際、僕は普通の人間ではない。だからごく普通の生活を求めるんだよ。僕自身は、自分が普通の人間だって思いたいけど、1日に18回くらいは普通の人間ではないことに気づかされるからね。人々が僕に求めるものは、僕の従兄弟に求めるものとは違うのさ。実際に、話したり書いたりしたことは全部、プレス声明でも出したかのように世間に広まってしまう。今だって、自己検閲しながら話しているんだ。もともと僕は口が軽いし、飽きっぽいから、つい本当のことを言ってしまう。一度そのせいで痛い目にあったことがあるよ。でも、僕自身としては、別に大勢の人に話したいわけじゃないんだ。話したことは何でも知られてしまうし、流出してしまうからね」

ソーシャルメディアを嫌う理由 ペラペラと本音を喋ることに慎重な人間なようだ。それに対し、世間は脈絡のない議論の種を心待ちにしている。そう考えると、彼がソーシャルメディアを敬遠するのも当然かもしれない。
「今どきの人たちは、ひと昔前の日記みたいにツイッターを使っているよね。こんなふうに感じた、こんなふうに思った、ってね。僕がやったら、やばいことになると思うよ。僕のキャリアは数分で水の泡だ。そもそも人生に必要なものだとも思わない。たしかに、プライバシーや自己防衛というのも理由のひとつだ。僕はこれまでずっと、プライバシーを守るためなら戦いも辞さないという姿勢でやってきた。一度瓶の外に出てしまったものは、戻せないということを僕は知ってる。そうなってしまった人たちを見れば分かるよ」
 暴言を吐く人たちが、その被害者のリアクションを直接見られない、というのも問題のひとつだと彼は言う。
「ルイス・C・Kがとても分かりやすく、こんな説明をしている。もしひどいことを直接人に言ったら、リアクションが返ってくる。だけど、ソーシャルメディア上では、『こいつは嫌な奴、あいつはまぬけな男、あの女はろくでなし』と言っても、何のリアクションもない。お金もかからない。自分が他人に対してしている不快な行動や発言にも、残酷さにも慣れていく危険性がある。こんなのは進化じゃない。他にも、ジョン・ロンソンが『So You’ve Been Publicly Shamed(原題)』という本で素晴らしい説明をしている。初めは正当な怒りから始まったはずが、あっという間に攻撃や虐待、いじめのようになっていく過程についてね。こんなことは、僕たちがすべき最善のことは言えないし、僕自身は関わりたくない。四六時中、他人が自分についてどう思っているか分かるなんて、最悪だろ? 僕らは霊長類なんだから、物事を秘めたり、偽ったりすることを知っているはずだ」
 ソーシャルメディアだけでなく、レビューもタブロイド紙のくだらないお節介な記事も見ないようにしている。実際の彼は、プロの俳優のイメージとは程遠い繊細な男なのだ。
「他人が書いた僕の悪口なんて読む必要がない。僕を好きじゃない人がいるのは分かってるしね。ただ、人が自分のことをどんなふうに嫌っているのか読んで、ケロッとしていられるほど強くないだけだ。そういうの、すごく気になるほうでね。実は精神面でも感情面でも弱いんだ」

THE RAKE JAPAN EDITION issue 09
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