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ジェレミーのアストンマーティン

September 2018

あのジェレミー・ハケットが、アストンマーティンの特別仕様車を作った。

英国好きにとって、最高の一台が出来上がった。

 

text nick foulkes  photography kim lang

 

 

 

 もしジェレミー・ハケットがこの世にいなかったなら、日本人は、彼を“発明”しなければいけなかっただろう。かの“菊紋の国”では、何もかもが、ものすごくマジメに行われるのだ。かつて彼らは、天皇陛下を“生き神”として崇めたが、洋服の世界においては、ジェレミーは、もはや天皇レベルだ。彼のスタイルは、いつもお手本にされて来た。

 

 もしジェレミーが、ズボンの裾をまくりあげ、頭にハンカチを巻いて現れたら、次の朝には東京中の洒落者たちが、同じ格好をマネするだろう。六本木ヒルズが“ハケットさん・トラディショナル・ショッピング・ヴィレッジ”と改名されなかったのは、ひとえに彼が控えめすぎたからだろう。

 

 最高の葉巻、ホヨーエピキュアNo.2をふかしながら、彼にそんな褒め言葉を投げかけると、大げさなことが嫌いな彼は、ちょっと照れつつ、「もし本当だったら、大変光栄なことだがね」と笑った。

 

 

 

 私は1980年代のはじめよりジェレミーを知っている。そして過去35年の間、彼はいつ会っても笑顔を絶やさない。

 

 彼のビジネスは、ロンドンのパーソンズ・グリーンで、ヴィンテージ・クローズを売ることから始まった。そしてスローン・スクエアに、ヴィンテージと同じようなテイストとディテールを持った新品を売る店をオープンした。その時の興奮を、私はいまだに忘れない。古着のような新品が、新品と同じような値段で売れるとは、当時誰も思っていなかった。そこは私が初めて天才カッターといわれたテリー・ハーストと出会った場所でもあった。

 

 

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