SIXTY YEARS OF BOND'S BEST CARS

60年にわたるベスト・ボンドカー

October 2022

 

ジェームズ・ボンドはアストンマーティンを特に好んだが(このリストを見ればすぐにわかるだろう)、過去60年間にさまざまなクルマに乗ってきた。その代表的なものを見てみよう。

 

 

 

by CHRIS COTONOU

 

 

 

『007/ユア・アイズ・オンリー』(1981年)で1980年製ロータス・エスプリ・ターボに座る俳優ロジャー・ムーア。

 

 

 

 ボンド映画にはたくさんのクルマが登場する。その多くは当時最も魅力的なモデルであり、トヨタ2000GTやフォード マスタングのように、ボンドが任務で訪れた国を代表する一台もあった。ロータス エスプリS1―潜水艦のようなエキサイティングな仕かけを持つものもあれば、エージェントがA点からB点へ移動するための単なる手段であるものもあった。

 

 

 

 

アストンマーティン DB5

 

 

 DB5は、ボンド・シリーズと最も縁が深いクルマだろう。『007/ノー・タイム・トゥー・ダイ』(2021年)のマテーラでのチェイスシーンを頂点として、劇中に8回も登場している(これは歴代のどのボンド俳優よりも多い)。

 

 シリーズ3作目『007/ゴールドフィンガー』(1964年)でボンドがフルカ峠を駆け抜けるシーンに初めて姿を現し、その象徴的なシルエットがファンの目に焼き付いた。歴史上最も成功したライセンス契約の始まりである。

 

 DB5は今でも、ジェームズ・ボンド一番の愛車である。

 

 

 

 

 

トヨタ 2000 GT ロードスター

 

 

 007は時折、そのミッションの目的地で生産されたクルマに乗ることがある。『007は二度死ぬ』(1967年)において採用されたトヨタ2000 GTロードスターは、戦後、明るい大国となった日本の象徴ともいえるモデルである。

 

 ボンドのプロデューサーであったアルバート・ブロッコリは、1965年の東京モーターショーでこのロードスターに魅了され、コネリーの180cmの体格に合わせて2台製作するよう依頼したのだ。ダニエル・クレイグは最近、このクルマをこれまでのボンドカーの中で最も好きな一台だと言っている。

 

 

 

 

 

アストンマーティン DB10

 

 

 ダニエル・クレイグといえば、新作では常にシリーズの遺産にインスピレーションを求めようとしている。2015年の『007/スペクター』ではアストンマーティンDB10を手に入れる。

 

 美しく、スリークなクルマであるが、一番の特徴はそのエクスクルーシブ性だ。DB10はDB9の後続モデルではなく、映画のためだけに作られた一台だったのだ(製作台数は10台)。ジェームズ・ボンドのためだけに作られた、アストンマーティンとして初のクルマだったのである。

 

 

 

 

 

ロータス エスプリ ターボ

 

 

 ロジャー・ムーアが演じた007は、ロータスとパートナーシップを結び、『007/ユア・アイズ・オンリー』(1981年)のロータス エスプリ ターボのような、スポーティで未来的なアイコンを生み出した。

 

 エスプリ ターボは映画では白のイメージだったが、舞台が雪の降るイタリアのウインターリゾート、コルティーナ・ダンペッツォだったため、キャンディカッパー色に塗り直された。プレイボーイのスパイがスキーに行くのに最適なクルマで、確かに印象に残る一台だ。

 

 

 

 

 

マーキュリー クーガー XR7

 

 

 ボンド役ジョージ・レーゼンビーの愛車ではなく、共演者のダイアナ・リグが乗っていたクルマだ。『女王陛下の007』(1969年)では、ボンドガールのトレイシー・ディ・ヴィンチェンゾが悪役ブロフェルドのメルセデス・ベンツ・モーターズからボンドを救出し、その後ミニ・クーパー・ラリーに乱入し、スイス・アルプスを走り抜ける。

 

 スパイ的なガジェットは一切なかった。アメリカン・マッスル・カーは、当時のボンドカーとしては少しミスマッチな存在だったが、今でも変わらずアグレッシブな印象を与えてくれる。

 

 

 

 

 

アストンマーティン V8 ヴォランテ

 

 

 アストンマーティンに話を戻そう。ティモシー・ダルトンが演じたボンド役は不当に見過ごされてきたが、『007/リビング・デイライツ』(1987年)での彼のクルマ選びは、忘れられないものとなった。

 

 V8ヴォランテは、英国のエレガンスと米国の力強さがミックスされたモデルで、陰鬱な魅力を放つダルトンには最適の組み合わせだった。ボンドカーの中で最もクールな一台だ。後年、『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』(2021年)にも登場している。

 

 

 

 

 

ロータス エスプリ S1

 

 

 ロジャー・ムーア時代のボンドのスパイツールの多くと同様に、ロータス エスプリS1は、コンピュータ・ゲーム時代を反映したスクエアでヒップなラインを持つクルマだ。

 

「ウェット・ネリー」というニックネームを持つこのクルマは、『007/私を愛したスパイ』(1977年)でボンドがサルデーニャの海で追っ手から逃れる際に潜水艦に変身したシーンが最も有名だ。S1は今でもスタイリッシュなレトロカーであり、ビーチに現れたその姿は永遠に不滅である。