DIFFERENT TYPES OF CHECKS AND THEIR ORIGINS

チフォネリに学ぶ、チェックの起源と着こなし方

October 2021

大胆なものからさりげない柄まで。チェック柄はスタイルに合わせて使い分けることをおすすめする。

フランス最高のテーラーのひとつ、チフォネリの既製服を例にとって、チェックの上手な着こなし方を考えてみよう。

 

 

by FREDDIE ANDERSON

 

 

 

 

 チェック柄は、デニムと同じように、メンズウェアの世界で最も普遍的なもののひとつであり、サヴィル・ロウ、ナポリなどの一流テーラーに最も愛されている柄のひとつである。

 

 パリ、マルブフ通り31番地のチフォネリ社も、そうした工房のひとつだ。数え切れないほどのフランス大統領や銀幕のアイコンのために、優れたチェック地を仕立ててきた。いとこ同士のロレンツォとマッシモのもと、現在はプレタポルテ・コレクションも製作している。レディ・トゥ・ウェアでは珍しい、幅広いチェック柄を使ったコレクションは、顧客やメンズウェアの評論家から絶賛されている。

 

 

 

 THE RAKEとのパートナーシップによるロレンツォ・デザインのコレクションも発表されている。チェック柄が好きな方、エレガントなテーラーリングを好む方、ロロ・ピアーナの生地を使ったコレクションをまだご覧になっていない方は、ぜひ注目して欲しい。

 

 とはいえ、チェック柄を存分に味わい上手く装うためには、さまざまな種類のチェックの起源について掘り下げてみる必要があるだろう。

 

 

 

 

 

プリンス・オブ・ウェールズ・チェック(グレン・チェック)

 

 

 

 このデザインは、ほかの多くのチェックと同様、スコットランドで生まれたもので、1840年に“グレナカート・エステート・チェック”として初めて登録された。デザイナーのエリザベス・マクドゥーガル女史が、グレン(峡谷)の底にある彼女の生まれ故郷の村、ルイストンで考案したという説が有力だ。

 

 一方、アーカート邸で働くスタッフに着せるため、スマートで丈夫な服を探していたシーフィールド伯爵夫人キャロラインが考案したという説もある。しばらくの間、このチェックはこの地方のファッションにとどまっていたが、狩猟で訪れた英国王エドワード7世(当時はプリンス・オブ・ウェールズ)は、領地のスタッフがこの柄を着ているのを見て、すぐに気に入ったという。

 

 それからプリンス・オブ・ウェールズは、王室でこの柄を常に堂々と着用していたため、“プリンス・オブ・ウェールズ(POW)・チェック”というニックネームが付けられた。以来、その人気は衰えることがない。

 

 

 

 

 POWチェックは、厳密にはグレンチェックの中でも特定の種類のものだけを指す。「オーバーチェックが付いているのが特徴で、グレンチェックにはオーバーチェックがない」とジェレミー・ハケット氏は説明する。

 

 したがって、ここで紹介するチフォネリのアイテムは、微妙な差ではあるが、POWチェックとグレンチェックに分けられる。ブラウンのルックの方は、かすかだがブラウンのオーバーチェックが施されているため、POWチェックとしている。

 

 

 

 

ブロークンチェック(ハウンドトゥース、パピートゥース、千鳥格子)

 

 

 

 ハウンドトゥースがほかのチェック柄と異なるのは、正方形の側面から張り出した模様がギザギザになっている点である。このギザギザを犬の奥歯に見立てる人がいることから、ハウンドトゥースと呼ばれる。

 

 1世紀以上も前に生まれた柄であるにもかかわらず、ファッション界で人気を博したのは1930年代に入ってからである。さらに、クリスチャン・ディオールが1948年の春夏オートクチュール・コレクションでハウンドトゥースをデザインに取り入れたことで、より熱狂的に支持されるようになった。

 

 今となってはサルトリアル的な一流ブランドも広く採用しているハウンドトゥース。スマートな装いには欠かせないチェック柄だ。今回のコレクションでのスリーピーススーツについて、ロレンツォは次のように語る。

 

「この生地が好きなのは、微妙な色調がたくさん合わさってできているからです。スリーピースのスーツはセパレートでも着用でき、デニムと合わせても素敵です」

 

 

 

 

ウィンドウペイン

 

 

 グラフチェックの中でも特に大きな正方形が含まれているものを、窓ガラスのように分割されていることからウィンドウペインと呼ぶことがある。近年、このウィンドウペイン・チェックが復活しつつあるが、これは一部のテーラーがスタイルと裁断のセンスを駆使して、本物の品質のチェックを作っているからである。

 

 

 

 

 

 

ギンガム

 

 

 ギンガムという言葉が英語になったのは17世紀のこと。もともとはインドから輸入された縞模様の布地のことだった。しかし、18世紀半ばにマンチェスターの工場で生産されるようになると、ギンガムはチェック柄や格子柄に織られるようになった。

 

 ギンガム(ヨーロッパでは「ヴィシー」と呼ばれることもある)は、太い線で構成されたチェックの中でも最もシンプルなもので、白地に単色のクロスが多い。さまざまな色があるが、ブルーが最もポピュラーである。線と線の間隔は常に一定で、典型的なチェッカーボードのようになる。

 

 今回のコレクションのひとつであるソフトグレイの大判ギンガムチェックシャツは、クラシックで控えめであり、ブラック&グレイのウール製グレンチェックスーツに見事に調和する。

 

 

 

 

タータン

 

 

 タータンの歴史は長い。スコットランドで知られる最古のタータンは、紀元後3〜4世紀のものとされている。紳士服の中で最も複雑なチェック柄と言われるタータンチェックは、太さの異なる多彩な色の線が交差してできている。線と線の間のスペースが均一である必要はなく、タータンチェックの長方形の大きさは異なる。

 

 この半世紀の間に、タータンチェックはクールなメンズウェアの代名詞となった。特にパンクスたちは、ビクトリア時代の貴族や軍隊を皮肉ってタータンチェックを取り入れてきた。