Excavating Ghosts
The many faces of Japan

発掘され続けるゴースト
「ジャパン」のさまざまな顔

September 2022

 

『レイン・トゥリー・クロウ(Rain Tree Crow)』

 

 

 

 

 ジャパンが解散して6年後、彼らの物語に思いがけない結末が訪れた。1989年、シルヴィアン、カーン、バルビエリ、ジャンセンの4人が、互いの不和を解消し、レイン・トゥリー・クロウの名でニューアルバムを制作するために再結成したのだ。

 

 ミック・カーンによれば、この新しいバンドは、複数のアルバムを録音し、ライブも行う長期的なプロジェクトだったという。しかし、レコーディング・セッション中に意見の相違が生じ、ジャパンの解散の原因となった緊張が再び生じた。デヴィッド・シルヴィアンがこのプロジェクトに、またも自分のビジョンを押し付けようとしたのである。

 

 完成したアルバム『レイン・トゥリー・クロウ』は、高い評価を得たものの、当初の目論見であった共同プロジェクトというよりは、デヴィッド・シルヴィアンのアルバムに、元ジャパンの他のメンバーがバックミュージシャンとして参加したようなサウンドになってしまった。

 

 そして、このアルバムが完成した時点で、プロジェクトも終了した。解散から年月が経っていたにもかかわらず、ジャパンの人気は根強く、アルバムは英国で24位、日本では49位を記録した。こうして、最も注目され、最も独創的なバンドの物語は幕を閉じた。

 

 2011年、ミック・カーンがガンで52歳の若さで亡くなったことで、今後の再結成の可能性は絶たれた。しかし、ジャパンの音楽は、ここ日本だけでなく、世界中でいまだ愛され続けている。彼らのオリジナル盤はコレクターズ・アイテムとして人気が高く、残された音源はリマスターされ、再リリースされ続けている。

 

 2021年の『クワイエット・ライフ【デラックス・ボックス・セット】』の発売に加え、日本ではユニバーサルミュージックから『孤独な影 + 4』と『錻力の太鼓 + 4 』の限定版がリリースされたばかりである。それぞれ4曲のボーナストラックを含むハイファイSHM-CDフォーマットで、素晴らしいジャパンの世界を堪能することができる。

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