THE A1 JACKET: BEST OF THE BOMBERS

A-1ジャケット:ベスト・オブ・ザ・ボンバーズ

March 2022

ミリタリーウェアの必須アイテムから、メンズウェアの定番アイテムへと変貌を遂げたA-1ジャケット。

現代的なカットとラグジュアリーなファブリックによって完璧に生まれ変わった。

 

 

 

by WEI KOH

 

 

 

A-1ジャケットを着こなすスーパーモデル、デヴィッド・ガンディ。

キャメルカラーのスエード製”ヴァルスタリーノ”ジャケット Valstar エクリュカラーのカシミア製サブマリンロールネック Private White V.C ホワイトの100%コットン製ヘリテージジョガー David Gandy Wellwear Photo by Arnaldo Anaya-Lucca

 

 

 

 ミリタリーウェアの歴史において一時は消えていたA-1ジャケットが、なぜ脚光を浴びるようになったのだろう。米軍物のオリジナルのエッセンスを受け継ぎつつ、スエードやテーラリング素材で進化したバージョンが、今、都会の大通りを席巻している。

 

 再び人気となった理由としてふたつ考えている。ひとつは、この10年間でファッション界がプルースト的な過去の追憶——ヴィンテージ・スタイルに回帰したこと。熱心なファンたちは、常に原型となるモデル——そのアイテムにおける“アルファ種”にこだわってきた。1890年に発売されたボタンフライのリーバイス501が熱狂的に支持されるのもそのためだ。

 

 同様に、最も男の想像力を掻き立てるアイテムであるレザーのフライトジャケットに関しても、人々はアイコニックなA-2スナップカラージャケットに情熱を注ぐべきだと気がついた。スティーブ・マックィーンが映画『大脱走』(1963年)で着ていたようなモデルである。そしてそれは、彼らをその前身へと導いた。より洗練され、よりドレッシーなA-1。これがふたつ目の理由である。

 

 

 

 

 フロントはホーンボタンで開閉し、襟はウールのリブ編みで立ち上がり、ウエストと袖はニットリブで、ミリタリーとサルトリアルの間の完璧なポジションをキープしている。A-2ジャケットは、スプレッドカラーのシャツやネクタイと合わせるとややコスチュームっぽくなってしまうが、A-1のエフォートレスなエレガンスは、ニットタイ、デニムシャツや長袖ポロシャツなどとも完璧にマッチする。ハンサムで適応力のあるウェアである。

 

 

 

 

 A-1は、A-2のようなオーバーサイズのブルゾンカットではなく、1920年代特有のスマートなカッティングが特徴だ。しかし、このジャケットはそのエレガンスとは裏腹に、ヒロイズムとユーティリティに彩られたアイコンであることを忘れてはならない。

 

 A-1は、1927年11月27日、アメリカ陸軍航空隊によって採用された。当時はジッパーがまだ一般化していなかったため、フロントはホーンボタンで開閉する。アイラ・イーカー中将や、1947年にアメリカ空軍の参謀総長となったカール・スパース大将など、伝説的なアメリカ人パイロットに愛用された。1920年代後半のパイロットたちの貴重な写真には、A-1ジャケットに身を包んでいるものが多くある。

 

 

 

 

 オリジナルのA-1ジャケットは、ホースハイドとニュージーランド・ケープスキンの両方で作られていた。そして1931年までには、米軍服はルーズカット、ジッパーフロント、スナップ襟を特徴とするA-2に移行した。

 

 しかし後年、そのフィット感とスタイルがスポーティなコアアイテムとして完璧であることが再認識され、A-1は復活した。1935年にデザインされたヴァルスター社の“ヴァルスタリーノ”ジャケットは、伝統的なA-1に華やかさを持たせるという、イタリアらしい発想のジャケットである。ヴァルスタリーノは極上の柔らかさとクールなデザインで知られ、現代のファッショニスタたちを大きな魅力で惹きつけている。

 

 

 

イタリア、ヴァルスター社の“ヴァルスタリーノ”ジャケット。ボタンフロント、リブなど、オリジナルのA-1の意匠を受け継いでいる。Valstar