What is NEW LUXURY? vol.03

キーパーソンに訊いた、これからの
“ニューラグジュアリー”とは? vol.03

February 2021

text & direction yoshimi hasegawa
photography issac marley-morgan

KEY PERSON 03
マイケル・ヒル氏
スーツはより自由でエキサイティングに

Michael Hill / マイケル・ヒル1977年生まれ。ドレイクスの初代ネクタイデザイナー、チャールズ・ヒルを父に持つ。ロンドン・カレッジ・オブ・ファッションで学び、卒業後サヴィル・ロウのリチャード・ジェームスへ。2004年からドレイクスに加わり、マイケル・ドレイク氏の元で研鑽。2010年ドレイク氏引退に伴い、共同オーナー兼クリエイティブ・ディレクターに就任。

「スーツを着てドレスアップしたいけれど、それは今までとは違う。今の気分によく合っている」というのが数年前から持っているドレイクスのコーデュロイスーツ。「洗濯機で洗ったりもしていますがいい風合いに馴染んで、今のお気に入りです」。シャツ、タイともにドレイクス。

 現代のブリティッシュスタイルの体現者であるマイケル・ヒル氏。今、ロンドンにいる彼にとってニューラグジュアリーとは、自身と家族の健康や幸福、人生を豊かにするアートだという。

「人生において何が本当に重要なのか。今回はこれを考える良い転機になったのではないでしょうか。今までも重要だと思っていましたが、こうした問題をより切実に考えるようになりました」

 彼の答えは、英国では洋服単体よりもライフスタイル全般が重要視されていることの表れだろう。

 コンサバティブと思われているブリティッシュスタイルにもカジュアル化の波は押し寄せてきている。果たして、スーツは生き残れるだろうか?スーツの概念は変わりつつあるとマイケルは言う。

「男は常に自分の気分が良くなるものを求めています。大部分の男にとってそれはスーツです。ドレイクスではクラシックなオフィス用スーツも作っていますが、販売する製品の多くはもっとカジュアルで、最近はゲイムズスーツ(games suit)を好んで着ています。スーツといえばテーラードジャケットとトラウザーズといったセットのような典型的スタイルから連想するものとはまったく違うスーツです。アンストラクチャードでライニングなし、カットはややゆとりがあり、パッチポケットやシームに特徴がある。

 今期はフランス製コットンドリル、日本製リップストップ、イタリア製コーデュロイを用意しています。ドレスアップもできるし、ドレスダウンもできる。非常に汎用性の高いアイテムで、従来より遥かに自由でエキサイティングなスーツです」

ベッドルームの絵画はモトコ・イシバシ氏によるもの。ロイヤルカレッジ・オブ・アートとのコラボレーションで。

 伝統をいかに現代に適応させるか、ニューノーマル時代のスタイル提案として2パターンの着こなしを用意してくれた。

「環境に配慮する時代の空気を反映してグリーンに注目しています。カーディガンのようにみえるかもしれませんが、日本の高品質なリネンからつくられたショアジャケットです。これはクラシックスタイルの改革であり、ユニフォームのルーツであるワークウェアの歴史に新鮮な文脈を加えたものです」

 同時に、英国ではサスティナビリティへの需要は益々増加している。

「洋服業界に関わる者なら誰もが考慮していて、メディアの注目度も非常に高い。ファストファッションからの廃棄物は深刻ですが、小さなブランドにも責任があります。私たちの製品の大半がヨーロッパ、および英国製であることに誇りを持ち、常にこの問題を考え、改善に取り組んでいます。定期的に取り替えられるのではなく、数十年にわたり慈しんで着用してもらえる製品であってほしいからです」

ニューノーマルなライフスタイルを象徴するリネンのショアジャケット。ブラウントラウザーズは5ポケットセルヴェッジのニードルコード使い。ポケットスクエアは、ヴィンテージのインドのサリー、ハンドロールで縁を仕上げたもの。オールデンのタッセルローファー。クラフトとスタイルという意味においてオールデンはドレイクスと共通点があると考えている。

本記事は2020年11月25日発売号にて掲載されたものです。
価格等が変更になっている場合がございます。あらかじめご了承ください。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 37

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