What is NEW LUXURY? vol.01
キーパーソンに訊いた、これからの
“ニューラグジュアリー”とは? vol.01
February 2021
世界のキーパーソンに現状と新たな価値観によるニューラグジュアリー、この時代ならではのスタイルを訊ねる本誌独占インタビュー。
photography sam wong
KEY PERSON 01
マーク・チョー氏
新たな挑戦と発見が作るスーツの真価
Mark Cho / マーク・チョー英国ロンドン生まれ。英国、南アフリカ、香港、中国、アメリカで育ち、米国ブラウン大学卒業後、投資会社を経て2010年、香港にアーモリーを設立。同年英国タイメーカー、ドレイクスの共同オーナーとなる。ニューヨーク、香港、ロンドンを拠点とし、時計やカメラにも造詣が深い。東西の垣根を越えた活躍はメンズウェア業界でも常に注目の的だ。
ブラウンスーツはリングヂャケット モデル11パーソナルオーダー。ドレイクスのブラックシルクニットタイ。シャツはアスコット・チャンのビスポーク。シューズはアーモリーオリジナル、ブラックカーフのブロードウェイ・ローファー。時計はanOrdain × The Armouryモデル1。
世界がかつてない事態を経験した今、我々はニューノーマルの時代を迎えている。新たな価値観のライフスタイルの中で、いったい何が真のラグジュアリーな価値になり得るのか?
地域はアジア、ヨーロッパ、日本、さらにブリティッシュスタイル、アメリカンスタイル、イタリアンスタイル、トーキョースタイルと、個々のスタイルを代表する6人のキーパーソンを選出。
メンズウェアのみならず、ライフスタイル全般において、自分を豊かに、かつ幸福にさせるものは何か?
スーツは生き残れるのか?
急速に注目が高まったサスティナビリティに対してどう思うか?
これら3つの観点から、世界各地に住む彼らにインタビューを試みた。
まず、トップバッターは真の意味でグローバルな視点を持つアーモリーのマーク・チョー氏だ。
「今、私は香港にいますが、この自粛生活の中で最も幸せな部分は今までより多くの時間を家族と過ごせることです。普段はストアのある香港、ニューヨーク、ロンドンを含め旅行が多いので、家族とは1年の3分の1くらいしか会えませんでした。今年は家族と一緒に長くいられる時間を本当に楽しみました。
これ以外にニューノーマルが私にもたらしたものといえば、そのほとんどは壮大なチャレンジともいえるものです。ビジネスには大きな負担となり、今までのやり方の多くを変えざるを得なかった。いつも幸福というわけではありませんが、このチャレンジには感謝しています。
具体的にはアーモリーTVとセカンドハンドおよびアウトレットストアサイトのドロップ93の営業やサイト運営に注力したこと、アーモリーでよりカジュアルなオリジナルメンズウェアの製造と販売を行ったこと、これらはすべて挑戦によって得られたより良い変化でしょう」
こうした試みに加え、ニューヨークのトライベッカ店に続き、アッパーイーストサイドにジ・アーモリー・ウェストベリー店をオープン。オンラインでビスポークオーダー会を随時開催するなど、現在も精力的に活動している。
最近のお気に入りはSIGMA FPカメラとNaoya Hida&Co.のNH Type1B。スモールセコンドの位置と最大限のムーブメントを搭載するため、1950年代製造のオールドクロノメーターを参考に、クロノグラフのムーブメントを解体しクロノメーターに組み直した独自の機構。懐中時計の意匠と最新技術を駆使した新しいレベルの時計だと語る。
ではサスティナビリティに対しての見解はどうだろう?
「クラフツマンシップとサスティナビリティは同じコインの両面ではないでしょうか。優れたクラフツマンシップの価値は長く続くものです。私はこの緊急事態にサスティナビリティへの危惧を深めています。経済的に困難な多くの人々は、より安く、より粗悪なものを購入せざるを得ない。そうした製品は長持ちせず、すぐに交換せざるを得ないでしょう。
2020年春夏の全般的な販売不振の現状を考えると、企業の倉庫には多くの在庫が残っている。一部の高級ブランドはブランドイメージを保護するため、売れ残った在庫を安価に販売するのではなく、シーズンの終わりに破棄することが知られていますが、今年はそうしたことが起こらないことを心から願っています。その行為は製品の原材料や、その製品を作った職人にとって最大の侮辱だと思うからです。
私が始めたドロップ93はオンラインで採寸、販売するのが難しいセカンドハンドのビスポーク等の衣類をカタログ化し、再販するオンラインサイトです。これも新たなチャレンジですが、大切に作られたセカンドハンドのビスポークが新しいオーナーを見つけられるようにしたかったのです」
果たしてスーツは生き残ることができるか、将来も必要とされるのだろうか?
「これまで以上にスーツは存続していくと私は信じています。私自身、この自粛生活の間ずっとカジュアルな服装をしていたのですが、スーツほど男性を引き立て、気持ちを高揚させる服は他にはないと実感しています。
ソーシャルディスタンスを経験した今、誰もが家族や友人、ビジネスで出会う人々と、今までのように頻繁に直接会える機会をもはや当然とは思っていないでしょう。今や対面で人と会うことは特別なことになりました。数週間または数カ月に1回、誰かに会う機会があれば、彼ら全員への敬意の表れとして自分の外見により気を配るべきだと思います。そういった場面こそ、スーツの真価が発揮されると思うのです」
ジャケットはアーモリーオリジナル シティハンターII、シャツはドレイクスのボタンダウン オックスフォードシャツ。時計はパテック フィリップ570。
グレイホーズはタビオ。シューズはアーモリーオリジナルDuane IIブラウンローファー。
ニューヨークオロロジカルソサエティ(時計学会)のラペルピン。ポケットスクエアの代わりにピンを合わせることでオリジナリティが加わる。ややフォーマルな前ページのブラウンスーツはスーツとタイをシルクで合わせ、ソフトなコンストラクションのジャケットに洒脱なバランスがある。
オリーブスエードのアーモリーオリジナル ライトジャケットにマドラスチェックのアスコット・チャンのビスポークボタンダウンシャツ。ナイジェル・ケーボン×アーモリー ジーンズ、シューズはムーンスターのスロースブーツ、時計はブレゲRef. 1775。今回はニューノーマルの時代に合わせ、素材の軽快感やシャツと時計、靴の合わせ方など、いずれもリラックスしたムードのある3パターンのコーディネイトを披露してくれた。
本記事は2020年11月25日発売号にて掲載されたものです。
価格等が変更になっている場合がございます。あらかじめご了承ください。
THE RAKE JAPAN EDITION issue 37
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