VASILIY AND ETTORE PIACENZA
情熱はDNAによって受け継がれる
May 2018
歴史を感じさせる工場
ヴァシリー:「ピアチェンツァはイタリアで、最初にカシミアを扱い始めたメーカーのひとつです。今でもカシミアは、うちの看板商品です。私たちの曽祖父の兄弟であるマリオ・ピアチェンツァは、世界で初めてヒマラヤのK2に登ったチームの一員でした。彼はその頃すでにテキスタイルの世界で働いていましたから、凍傷にならないよう足をカシミアで巻くようにとすすめたシェルパに、その入手方法を聞いたのです。そして彼はカシミアをイタリアへ持って帰ってきました。それ以来100年間、カシミアはわれわれのDNAとなっているのです」
ヴァシリー:「 私たちはふたりとも、大学では経営学を勉強しました。でも会社のなかでは、別々の役回りをしています。私はピアチェンツァに入る前は、ジョルジオアルマーニのニューヨーク支社にいました。その経験は、ラグジュアリー・ブランドというものを理解するのに役立ちました。ブランド側が、どうやって物事を考えるかを学べたのです。今日の私たちのビジネスは、顧客であるブランド向けに生地を作って、売ることがメインとなっています。ブランド側の立場で働いたことで、彼らが何を欲し、いかにクオリティを重視し、どんな生地を探していて、どれだけのお金を払おうとしているのかがわかるようになりました」
エットーレ:「私も早くから、ファミリービジネスに参加しようと決心していました。父は私を社員にしてくれ、私は繊維や生地というものに、すぐに魅了されました。カシミアやアルパカ、ビキューナなどについてもっと知りたかったので、ペルーや中国、ヒマラヤの草原などで、獣毛について学びました。動物の毛がいかにして美しい繊維に変わっていくのか、その一連のプロセスを見たのです」
エットーレ:「われわれの哲学は“決して妥協しない”ということです。価格が高いからといって、原材料を変えることはしません。素晴らしい製品の裏には、必ず素晴らしい素材があります。素材の価値を信じているのです」
フィニシング・ルームでの職人