December 2020

THE RAKE ON NEW LUXURY 04

ニューラグジュアリーのキーワード
日本人が手がける“シンプルな上質”

シンプルでありながら柔らかで温もりのある製品を手がけられるのは、日本人特有だ。
これからますます注目される5ブランドを紹介。

面白いことに、フィレンツェ人が鞄を作っても絶対にこうはならない。日本で建築を学んだ村田博行さんの感性とフィレンツェのルネッサンス的芸術性がいい感じの塩梅で混じり合っているからこそ生まれる、この有機的で、クラシックかつモダンなフォルムが実に美しい。ビスポークのみで、納期は約1年〜。人気がある青のワンショルダーバッグ¥245,000、ソフトブリーフ¥210,000〜、クラッチバッグ(小)¥90,000〜、(大)¥205,000〜(すべてオーダー価格) all by Saic(サイク Email: info@saicfirenze.com

SAIC
フィレンツェで最注目の鞄職人
村田博行さんは身体が大きくてクマさんのような雰囲気だが、とても紳士的な方で、普段の格好もヴィンテージの古着を混ぜながらとても素敵な着こなしをされていて、相当お洒落な方なのかなというのが僕の感想。もともと建築を勉強されていたからデザインのまとめ方も革の表情の引き出し方も抜群に上手い。縫製も美しく、そして何よりフィレンツェらしい優美な柔らかさを備えているのが魅力の鞄だ。

Hiroyuki Murata / 村田博行1984年、東京都生まれ。学生時代は建築を学び、その頃から独学で鞄作りをスタート。卒業後はアパレルを経て、2009年にフィレンツェに渡り、CISEIの大平智生氏に師事。2015年に独立し、ビスポークの鞄工房「SAIC(サイク)」をフィレンツェにて始動。奥様の夕希子さんとふたりで手がけている。

 シンプルな中に独自のエレガンスと上質さをプラスし、新しさを生み出せる日本人の卓越した技術と感性は、世界でも類を見ない。フィレンツェ在住の鞄職人、サイクの村田博行さんが手がける鞄はその好例で、革の表情の生かし方に長け、優しいラインを描きつつ、スッと服に溶け込んでくれる。

 そういった点では久木元 亨さんが手がけるレスレストンのドレスシャツも面白い。ここのパターンの完成度の高さや精緻な縫製については過去に紹介しているので今回は割愛するが、代わりに久木元さんとナポリで一度ご一緒した際、街でもリストランテでも氏がひと際エレガントだった点に注目したい。技術だけでは生まれ得ない色気を備えているのはレスレストンのシャツの強みで、僅かな美意識の差であってもそれは製品に如実に表れる。レスレストンのシャツの色気の秘密はそこにあるのだと思う。日本人が手がけるシンプルな上質、これからますます面白くなっていくと思う。

SAIC
自身の工房で手がける革小物も秀逸
村田さんは革小物も手がけており、裁断も縫製もすべて自身の工房で丁寧に美しく仕立ててくれる。ディテールのひとつひとつにまで宿る彼の美意識に唸らされる。ベルト¥38,000〜、カードケース¥36,000〜、長財布¥78,000〜(すべてオーダー価格)Saic(サイク Email: info@saicfirenze.com

IL QUADRIFOGLIO
手がけるのは久内淳史氏の奥様
ビスポーク靴職人の久内淳史さんの奥様、夕夏さんは、フィレンツェで修業を積み、絞りの革製品を得意とする革小物職人だが、すばらしいオーダーベルト(納期は約1カ月半〜)も手がけている。シルバーバックルや希少革も揃う。ベルト¥50,000〜(オーダー価格)Il Quadrifoglio(イル クアドリフォリオ Tel.078-587-2050)

THROW
整理加工の技で魅せる至高の肌触り
スローの山内達詞氏の家業は尾州の生地コンバーターで、日本が誇る最終の整理工程の技術で、今までにない軽くて柔らかなタッチのストールを生み出している。バッファローチェックもモダンな印象だ。ウールカシミアストール(50×194cm)各¥23,000 ThrowAfterhours

LES LESTON
ミニマルな美しさが生むエレガンス
レスレストンのシャツの美しさ、着やすさはいうまでもないが、久木元氏の意図的なディテールだけでなく、無意識のうちに表現されて生み出される美しさがいい。秋冬にコットンリネンを提案するところもいい。ビスポークシャツの納期は3カ月〜で、¥48,000〜(オーダー価格) Les Leston(レスレストン Tel.06-6448-8330)

本記事は2020年11月25日発売号にて掲載されたものです。
価格等が変更になっている場合がございます。あらかじめご了承ください。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 37

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