THE MAN WITH THE HORN : MILES DAVIS

ホーンを持つ男:マイルス・デイヴィス

June 2022

text ben st george

デニム素材の上下に大ぶりのサングラスといういでたち。ロードアイランド州で行われたニューポート・ジャズ・フェスティバルにて(1967年7月)。

 アフリカの伝統的なシャツやバンダナ、そしてトレードマークとなった大型のサングラスで、独自の美学を追求し始めた。一歩間違えると、滑稽になってしまうような装いだが、彼はいつも堂々としており、その存在感を際立たせた。“クール”を誕生させた男は、いつも特別なオーラを放っていたのだ。

 1980年代になると、日本のデザイナー、佐藤孝信のアーストンボラージュを愛用するようになり、その独自性にますます磨きがかかった。死の直前にデイヴィス自身がトゥループに語った、彼を象徴するようなエピソードがある。

「1970年にフィルモア・イーストで2回ほど演奏したことがある。俺はスティーブ・ミラーというくだらない奴の前座だった。1枚か2枚のレコードを出したからといって、この演奏しないクソ野郎のためにオープニングを務めることになって、俺は腹が立った。だから俺はわざと遅れてきて、彼が先に演奏しなければならないようにしたんだ。俺たちは会場を大いに沸かせた。誰もが俺たちの演奏に熱狂した」

 そして誰も、それを超えることはできなかった。

左から、キーボードのチック・コリア、マイルス・デイヴィス、ベースのデイヴ・ホランド。英国BBCのTV番組『ジャズシーン』より(1969年)。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 44
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