THE HOUSE of VINTAGE
服道楽最後の“沼”へようこそ:ペコラ佐藤のヴィンテージ生地入門
January 2023
保管庫内部。何本もの棚が設えられ、膨大な数の生地ストックが保管されている。その数は数百、数千はあろうか。生地は種別・年代別に整理されている。空調によって一定の温度・湿度が保たれるように設計されており、本場英国同様の生地管理が可能だという。
日本におけるクラシコ系サルトリアの草分けであり、過去30年にわたってこの分野をリードしてきた佐藤英明氏が、故郷である千葉・館山にヴィンテージ生地の保管庫兼ショップを開いたと聞いて、早速取材に伺った。
中心街に忽然と現れる南イタリア風の建物は、ソフィア・ローレン主演の映画『これからの人生』に出てくるものを模したという。内部には大きな棚が並べられ、数え切れないほどの反物が、うずたかく積まれている。その量はまさに圧巻である。
新世代テーラーの騎手といわれた佐藤氏は、この地で戦前の1932年から続いているテーラーの三代目でもある。これらの生地は祖父の時代から、コツコツと集められてきたものだ。今回は、服道楽の終着駅ともいわれる、ヴィンテージ生地の奥深い世界を、読者の皆様にお届けしよう。
Sato Hideaki / 佐藤 英明1967年、千葉県館山市生まれ。同地にて1932年から続くテーラーサトウの三代目。1988年渡仏、裁断学校AICPを卒業。その後イタリア・ミラノへ渡り、名サルト、マリオ・ペコラ氏のもとで5年間修業する。1995年に帰国後、家業を継ぎ、2000年にペコラ銀座を開店。本場の仕立て法を日本に持ち込んだパイオニア的存在であり、現在でもフロントランナーのひとりである。