January 2023

THE HOUSE of VINTAGE

服道楽最後の“沼”へようこそ:ペコラ佐藤のヴィンテージ生地入門

photography tatsuya ozawa

千葉・館山にあるペコラ銀座の工房内部。中央にミシンが置かれるレイアウトはナポリ、サビーノの配置を参考にしたという。現在8人の職人がおり、中には中学卒業後ここに65年以上務めている人もいるという。素晴らしいのひと言。事前予約すれば、見学も可能だ。

どこで入手してきたのか?
「専門の生地商人から買うことが多いですね。欧州を回って、古い布を買い付けている人がいるのです。まさに生地ハンターですね。面白いのは、ポルトガルやキプロス島などにもいいものが残っていること。キプロスはかつての高級リゾート地で、お金持ちが多く集まったのでしょう。旅行ついでにスーツでも作るか、という時代があったわけです。一時期、いい生地が山ほど出て、たくさん買いました。もちろん秋冬物もあるんですよ。それから洋服店をやめてしまうところへ伺って、まとめて買ってくることもあります。実は今も一軒、伺おうと思っているところがあるんですよ」

なぜ集めるようになったのか?
「かつては、私の父が一所懸命生地を集めるのを見てバカにしていました。そういうことをしているから、ウチは儲からないんだと(笑)。服屋としてはバンチを見せて、その都度仕入れたほうが、効率がいいのです。しかし、そのうちわかったのは、いい生地は、欲しいと思ったときに買わないと、いずれ廃番になってしまうということです。だから心底いいと思ったら、買っておくしかない。それがチリツモで、ご覧のような有り様です(笑)。まさに生地との出会いは一期一会のようなものですね」

価格はどのくらいなのか?
「ウチは古いからといって、価格を高く設定することはありません。通常はスーツ38万円〜のところ、ヴィンテージ生地だとスーツ45〜50万円、ジャケットで32万円〜です。ビキューナなどの希少品を除けば、びっくりするほど高いものはないですよ。高いと買わなかったからです(笑)。しかし先に申し上げた理由で、フルハンドのラインでないとお受けしません」

THE RAKE JAPAN EDITION issue 46
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