January 2023

THE HOUSE of VINTAGE

服道楽最後の“沼”へようこそ:ペコラ佐藤のヴィンテージ生地入門

photography tatsuya ozawa

英国バークレーのヴィンテージ生地を使ったジャケット。ダークブラウンのヘリンボーン地。ずっと英国で保管されていたもので、約3年前に入手。ねっとりとした生地感が残っており、素晴らしい肌触り。¥550,000(スリーピース仕立て上がり価格)

そもそもヴィンテージ生地とは何か?
「ヴィンテージ生地といっても、明確な定義があるわけではありません。私的には、今では手に入らない、古くていいもの全般を指す言葉として使っています。よくヴィンテージ生地というと、硬くて厚いものだと思っている方がいますが、一概にそうとはいえません。柔らかい生地もたくさんあります。色柄は現代と比べると、圧倒的に柄物の種類が多いですね。織り感、質感ともに多種多様で、チョイスの幅は広がります」

いつ頃のものが多いのか?
「ここにあるのは、私が自分の店を開いてから、およそ過去30年間のものが多いのですが、中には祖父や父が集めた、昭和30年代の生地もあります。ふたりとも他界してしまいましたが、彼らが書いた伝票は残されています。半世紀も前になると、日本製の生地が多く、舶来物は希少ですね」

どこの国のものが多いのか?
「英国製が大半を占めています。英国製7割、残りがイタリア製、日本製は1割もないでしょう。イングランド製は、テーラー&ロッジ、モクソン、ブロードヘッド、ジョシュア・フランスなど。リード&テーラーだけがスコットランド産で、色遣いが変わっています。マーチャントではドーメル、スキャバル、バークレーなど。イタリア製の代表格は、やっぱりエルメネジルド ゼニアです。昔のゼニアは柄がサイケ調だったりして、なかなかいいのです」

ヴィンテージ生地の魅力とは何か?
「昔の生地はゆっくりと織ってあるので、ソフトであるにもかかわらず、アイロンが効きやすく、服に立体感を出せるのです。すると服の質感もよく見え、着やすく、動きやすくなります。今のものは速く織ってあるので、アイロンを当てても元に戻りやすく、平面的になりがちです。もちろん芯地等を駆使して形を作るのですが、生地自体で立体を保持する力は、昔のもののほうが上でしょう。古い写真を見ると、皆、立体的な服を着ているでしょう? これは伝統的な手作業で仕立てないと、昔の生地のよさは引き出せないということでもあります。ヴィンテージ生地を工場縫製したのでは、あまり意味がありません」


本記事は2022年5月25日発売号にて掲載されたものです。
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THE RAKE JAPAN EDITION issue 46

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