THE GRAPE AND THE GOOD
300年のラグジュアリー:レミーマルタン
August 2019
カリスマ的CEO、エリック・ヴァラに聞いた、ブランドの次の世紀とは?
Eric Vallat / エリック・ヴァラレミーマルタン社CEO。1993年パリHECビジネススクール卒業。投資銀行にて働き始めるが、馴染めず、ルイ・ヴィトンへ入社。3年後、ルイ・ヴィトン・フランス社のCEOに任命される。2004年にはクリスチャン・ディオール・クチュール・ジャパンのCEOに就任。2008年にパリへ戻り、ボンポワン、ジェイエムウエストンなどの責任者を務める。現在は最高級酒ブランドのレミーマルタン、ルイ13世のすべてにおいて、最高責任を負う立場である。
諸兄らもよくご存じのように、イギリスとフランスの「和親協商」とは名ばかりで、昔からまるで兄弟ゲンカのような、低レベルな中傷合戦を演じてきている。
しかしながら、イギリス人が帽子を取り、フランス人に敬意を示すべき領域もある。それは、ブドウに関する技術だ。いかにして、あのくすんだブドウの実を収穫し、どうやってあの果てしなく複雑で味わい深い飲み物を造り出すのか。イギリス人である私には、想像も理解もできない。
もちろん、これはワインに限らず、アルマニャックからシャンパーニュにまで当てはまることだが、最も威厳があるのはコニャックだろう。なかでも、レミーマルタン・ブランドが誇るコニャックはその頂点に君臨する。
レミーマルタンは、自ら認めている通り、最近までどこか謎に包まれたブランドだった。しかし、ロンドンのウォーダー街に期間限定の会員制サロン“ラ・メゾン・レミーマルタン”をオープンさせるなど、止まっていた何かが動き始めたように思える。
カリスマ的なCEO、エリック・ヴァラによれば、これは革命などではなく、製品への絶大な自信に基づいて、自然に行なわれたことだという。エリックにインタビューし、彼のアプローチと、レミーマルタンの今後の展望について話を聞いた。
ブランド・ビジネスの楽しさ「もともとはプライベートバンキングの仕事をしていました。ある意味ラグジュアリーな世界ですが、1年半で自分には全く向いていないと気づいたのです。コンピューターと向き合い、ひたすら財務について追求する毎日で、うんざりしました。私がやりたいのは、直接触れて感じることができ、誇りに思えるようなモノを作る仕事でした。そしてラグジュアリービジネスに惹かれていったのです。