SLAVE TO LOVE

孤高の天才、プリンス

September 2016

text stuart husband
Issue12_P51_1

ポートレイト用のポーズ(1981年)。

あまりにも露骨だった歌詞 1980年代にリリースしたアルバム『Dirty Mind』では、「Head」などの歌詞の中で、直接的で過激な表現を披露した。彼は宗教的な体験にオーガズムを見出し、「Cream」では「U got the horn, so whydon’t U blow it ?(ムラムラしたら、かましてやれ)」と当たり前のように問いかけた。「The Cross」や「I Would Die 4 U」といった官能的でゴスペルチックな曲を考えれば、オーガズムに宗教性を見いだしていたともいえる。もっとも、エホバの証人に改宗してからは、過去の楽曲がオンエアされると、あわててその場を逃げ出していたらしい。

 彼は「If I Was Your Girlfriend」や「When You Were Mine」のように複数恋愛をモチーフにした曲で、性別、国籍、人種を飛び越えた“別人格”を演じている。ゆえにそのスタイルは、「Purple Rain」で着たフリルシャツ、ミリタリーキャップにゴールドグリーンのアイシャドウ、そして水玉のホルタートップというコーディネイトなど、遊び心に富んでいた。ハイヒールは本人曰く、158センチの身長を高く見せるためではなく、女性に好まれるために履いていたという。

 このように枠にとらわれないスタイルを好んだので、清教徒的な自らの故郷より、退廃的な古きヨーロッパで特に高い評価を得た。自身が監督し、ヨーロッパを舞台にした映画『プリンス/アンダー・ザ・チェリー・ムーン』が酷評されても、この評価は揺るぎない。

意外な一面と独創性 プリンスにまつわる信じられないようなエピソードもいくつか残っている。彼はポップコーンがあまりにも大好きで、映画を観ながら特大バケツ3杯分をむしゃむしゃ食べていたそうだ。高校時代は代表チームに選ばれるほどバスケットボールが得意で、かつてのチームメイトによると、他の誰よりも小柄なのに素晴らしいハンドリング技術と優れたシュート力を持っていたらしい。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 12
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