July 2020

一生愛せる、ニッポンの職人が作る服 Vol.02

サルトリア シルヴァノ の
“カッポット ミリターレ”

今や、世界一美しい手仕事とも称されている日本の職人たちであるが、
彼らの作品の中でも、まさに“一生もの”といわれているマスターピースを紹介する。


ナポリでの4年半の修業を終えて帰国したばかり。
アントニオ・パスカリエッロ氏のもとで学んだ菅沼知央氏が仕立てるコートが素晴らしい。
text yuko fujita
photography jun udagawa
styling akihiro shikata

ナポリ遺産の仕様を最高の仕立てで表現 素晴らしい才能が現れた。上木氏の師匠であるナポリのアントニオ・パスカリエッロ氏の工房に住み込んで、2013年から2017年末までの4年半、月曜から土曜まで工房に籠りっきりでストイックに修業していた菅沼知央氏だ。

返りの美しいラペルが端正な表情を生む小ぶりなラペルをふわりと立体的に返らせ、ラインを膨らませず直線にしていることで端正な表情。首元を閉じることもでき、その際、剣襟が当たらないよう位置をやや下げている。

 師匠から学んだ伝統的なアルスターコート“カッポット ミリターレ”が超絶素晴らしい。ナポリ遺産的な正統のスタイルをベースに自分の感性を少しだけ振りかけて仕立てたこちらは、コンパクトな襟回りがキリッと全体を引き締め、ロールを強めたラペルが、若々しさを生み出している。ほんのひと振りのスパイスで絶妙な味付けをするあたりに卓越したセンスを感じる。そして何より、仕立てにオーラがある。

後ろのボタンはループ留めマルティンガーラ(コートの背バンド)と大きなヒダが入ったエレガントなバックスタイル。ヒダのボタンはループにかけて留めるクラシックスタイルゆえ、生地が重ならず、座ったときもごわつかないのが利点。

Tomohiro Suganuma / 菅沼知央1986年、岩手県北上市生まれ。都内のテーラーで経験を積んだのちに2013年にナポリに渡り、アントニオ・パスカリエッロ氏のもとで4年半修業。昨年末にナポリから帰国し、今は実家でサルトリアシルヴァノの創業準備をしているところだ。年内に都内に工房を構える予定。既に海外から結構な数の注文アポイントが入っている。素晴らしい腕とセンスを兼ね備えており、一気にブレイクするのは確実だ。コート¥500,000~、スーツ¥420,000~、ジャケット¥340,000~。まだスタートしていないので、納期はこれからの注文量次第になるため未定。連絡先は、sartoriasilvano@gmail.com

本記事は2018年5月24日発売号にて掲載されたものです。
価格等が変更になっている場合がございます。あらかじめご了承ください。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 22

Contents

<本連載の過去記事は以下より>

サルトリア チッチオの “マニカ フォルケッタ”

レスレストンの “ビスポーク シャツ”

サルトリア カブート の “ツイード ジャケット”

ペコラ 銀座の “カシミア ハンティング ジャケット”