Plenty more Mr. Nice Guy
ヒュー・ジャックマン スペシャルインタビュー
January 2015
text shiho atsumi
photography gillles-marie zimmermann
スクリーンでは驚くほど多様な役柄を演じる。写真は上から『リアル・スティール』『ヴァン・ヘルシング』『タロットカード殺人事件』。
だが今や、大作ミュージカル映画『レ・ミゼラブル』では主役のジャン・バルジャンとして歌い上げ、作家性の強いドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の『プリズナーズ』では復讐に憑かれた狂気の父親を演じ、アカデミー賞授賞式の司会さえもやっている。
「ウルヴァリンが何かの妨げになったり、そのせいで型にはめられることもなかった。昔は、例えばジェームズ・ボンドを演じた俳優たちが、そのせいで固定観念を持たれてしまったといった発言をしていたよね。でも僕はこの役でそうはならなかったし、そのことを本当に感謝してる。自分が他に何ができるかを見せるチャンスが何度もあったんだ。かなり意識的にスーパーヒーローものとはかけ離れたことをしようとしてきたからね」
学生時代からやっている朝晩の15分間の瞑想も、この世界における彼の気の持ちように少なからずいい影響を及ぼしているようだ。
「個人の生活においては真理を理解したいと思うし、それは常にずっと続けている。瞑想は僕の心のよりどころだし、自分自身を取り戻す方法でもある。取材される側の人間だとか夫だとか俳優とかなんでも構わないけれど、それらはどれも単なる役割でしかないんだよ」
人生においてどんなに大きな出来事を与えられようと、突き詰めればそれはたいした問題じゃないと彼は言う。だからこそ華々しい成功を手にしても、それに溺れたり、振り回されたりすることがないのかもしれない。
「キャリアをスタートした頃は、常に通りをグレートデーンに引きずり回されているかのようだった。“おいおい! 楽しいけど制御できないよ!”って感じだね。でも僕は難局を乗り越えるのが好きなんだよ。これはさざ波でも2フィートの波でもない、ビッグウエーブなんだっていう事実に乗っかってしまうのさ。高波がきたらどうする? 身をかわして隠れる? それとも起き上がってボードに乗り、前に進む? 僕は、たとえ波に飲まれてボードから落っこちても、波乗りを楽しむよ。重要なのは結果ではなく、波に乗ること自体だと気づくことだ。それこそが僕のたどり着きたい境地なんだよ」
いまや代名詞とも言えるウルヴァリン役(上写真)は、この役のオファーを断ったラッセル・クロウの推薦で決まったらしい。下写真は、2013年オスカーにノミネートされた『レ・ミゼラブル』のジャン・バルジャン役。