NORTHERN SOUL

POCKET GUIDE: カール・マシュー

September 2018

ロンドンでのビスポークメンズウェアシーンでは比較的新しい「English Cut」。
今回はそのクリエイティブ・ディレクターを務めるカール・マシューに登場していただこう。

ロックンロールを愛するサヴィル・ロウ育ちのデザイナー
English Cut クリエイティブ・ディレクター
Karl Matthews / カール・マシューダブルブレステッドスーツは、ソルビアッティ社のデニムブルーのリネン。マシュー自ら作ったものだ。

 ヨークシャー出身のカール・マシュー。若い頃はロックンロールや、ドレッドロックをこよなく愛し、体にタトゥーを入れる日々を過ごした。そして若かりし彼は、ぼんやりとながら、何かしらクリエイティブな仕事をしたいと考えていた。

 ファッションを本格的に意識し始めたのは、15歳のとき。きっかけは、叔父さんの洋服店で見た、メンズウェアのスタイリングルックであった。20代に入り、アレキサンダー・マックイーンが同じくらいの歳にサヴィル・ロウで修業をしていたことに感銘を受け、自身も南に下る決意をした。

 とりあえず、名だたるサヴィル・ロウの重い扉をノックして回った。運がよくアンダーソン&シェパードが彼を受け入れてくれ、彼はドレッドロックに別れを告げた。1998年のことだ。

 初めはコート作りから始まり、後にカッティングルームでも仕事をこなした。そこで12年間自身の腕を磨くと、一度北に戻ることを決意する。しかし、English Cut のクリエイティブ・ディレクターとして彼はまた戻ってくることとなる。現在チルターン・ストリートに店を構えるEnglish Cutは、さまざまなカテゴリーの人たちにアピールできるように努められている。

 カールのスタイルは、自身の過去からの影響が大きい。「自分のルーツに帰ると言うんでしょうか? きっとボヘミアンなスタイルだと思います」と彼は語る。ブランドのイメージそのままに、彼はいつもシャープだ。今回着ているのは、ソルビアッティ社のリネンを使ったスーツ。確かにEnglish Cutはテーラーリングハウスとしての歴史は浅いかもしれないが、非常に強くロンドンを感じる。そしてカールのデザインもまた非常に魅力的だ。

ブリティッシュ・ドレープの申し子であるマシューが言うには、ダブルのジャケットは愛しい人に抱きしめられている感覚だという。シャツはチャリティーショップで買ったもので、リネンのネッカチーフはEnglish Cutで扱うスカーフやポケットチーフを担当しているFariba Soltaniのもの。イタリアのコモにて生産されている。胸ポケットには、ヴィンテージのポケットチーフとレイバンのウェイファーラーを。

アンダーソン&シェパードに入る前にどうしても必要だったのがブリーフケースだったらしい。もうどこで手に入れたのかは覚えていないようだが、ともに戦ってきた戦友のようなものだと彼は言う。

9歳になるフローレンスという名の愛娘がいる。彼女は彼のミューズ。カールの胸には彼女の手のアウトラインがタトゥーとして彫られている。

English Cutの店内に入ると、カールがショップに居るのか居ないのかが、Le Labo Santal33の香りでわかる。ウッディで、ほんのり甘くマスキーなノートが特徴だ。ラベルには“Karl loves Florence”と入っている。

ロックンロールへの愛は、カールのアクセサリーを見ても一目瞭然だ。だいたいがThe Great Frog製。ゴールドよりもシルバーが好みだという。ビーズのブレスレットは娘の手作りで、イビザにホリデーで行ったときプレゼントしてもらったもの。

靴はジョージ クレバリーがお気に入り。
「ずいぶん長い間履いています。完全にセカンドスキンですね。スリッパのような感覚で履いています。そして昔馴染みの親友のようでもあります。彼らは絶対に裏切らないでしょう?」

チュードル ブラックベイのダイバーズウォッチには、NATOストラップ。
「私の生活スタイルに完全にマッチしているんです」

THE RAKE JAPAN EDITION issue 24

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