Miller’s tale

ロバート・ミラー:
DFS創業者、その野心

March 2017

text james medd
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ロバート・ミラー(1990年代)

 ニューヨークで行われた披露宴は3日間も続き、香港をテーマにしたブラックタイ・パーティがバッテリー・パークで催された。竹を植えた温室でカクテルがふるまわれ、4ツ星シェフのダニエル・ブールーによるディナーが中国風の大型テントで供された。

ダイアナ妃以来の結婚式 もっとも、3人娘の中で最高の結婚をしたのはマリー・シャンタルである。彼女は1995年にギリシャ王コンスタンティノス2世の長男、パウロス王太子に嫁いだのだ。結婚式はロンドンにあるギリシャ正教の聖ソフィア大聖堂で行われ、チャールズ皇太子とダイアナ妃の結婚式以来、最多となる王侯貴族が列席した。英国、デンマーク、スペインの王室に加えて、ベルギー国王夫妻やブルガリア皇帝夫妻、さらにはアガ・カーンやルパート・マードックといった世界の大物まで、そうそうたる顔ぶれだったという。

 結婚式に先立ち、エリザベス2世主催のパーティがクラリッジス・ホテルで開かれ、リハーサルディナーがケント州のルータムパークで催された。このディナーを取り仕切ったケネディ家御用達のイベントプランナー、ロバート・イザベルはふたつの大型テントでパルテノン神殿を再現し、参道に並べた壺にはエクアドルから取り寄せたイエローやオレンジのバラを、10万本もあしらった。

 1,400人を招待した披露宴の会場は、ヘンリー8世の居城だったハンプトン・コート宮殿。ヴァニティフェア誌によれば「おそらく、英国史上最も豪華な婚前・結婚パーティ」だったという。

 ミラーは3人の娘にそれぞれ2億ドルの持参金を持たせたといわれている。これが、娘の望みはなんでも叶えてやる甘い父親の心遣いなのか、それとも社交界での地位を確立しようとする野心の表れなのかは、意見が分かれるところだ。

 娘たちは社交界の人脈を作りやすい学校や大学に入り、ニューヨークでパーティを巡り、グシュタードで冬を過ごしていたから、ミラー夫妻が世界を股にかける富裕層らしく振る舞おうと必死だったのは間違いない。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 14
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