MASTERPIECES OF FABRIC BY BATAK
バタク中寺 広吉氏が選び抜いた名作生地図鑑
February 2023
3. コート編ヘビーウエイトの生地のよさを、思う存分楽しめるのがコート地の醍醐味だ。500g/m以上の生地は、実に育て甲斐がある。高級なカシミアなどはチェスターフィールドに、カジュアルなツイードは、ラグランスリーブなどで仕立てたい。
FOX BROTHERSフォックス ブラザーズは250年もの歴史を持ちながら進取の気性を失っていない。2009年より屈指のファッショニスタとして知られるダグラス·コルドーがCEOとして同社の舵取りをしている。圧倒的な取扱量を誇るフォックスクロスと謳われるフランネルとは別の方向を開拓しつつ、アーカイブを生かした新商品の展開が期待されている。写真:OVERCOATING(ダークグレイヘリンボーン 580g/ウール100% ¥297,000~)
ラムウールでじっくり織り上げられた高密度素材。その保湿性のよさは、オンタイム、オフタイムを問わず、多様なニーズに対応している。着飾るだけでなく、実用的な使用にも向いている。「ダグラスさんが入ってフォックスは変わりましたね。色柄のセンスがよくなった。ハズレがない、クラシック好きにとって、長く付き合えるブランドとなりました」。
HARRISONS1863年、サー·ジョージ·ハリソンによって創設された。彼は1800年代初頭に仕立屋の見習いとしてキャリアをスタートさせ、エディンバラ州知事、スコットランド最古のチェスクラブ会長にまで上り詰め、亡くなる前の5日間、国会議員を務めたこともある。赤いバンチがトレードマーク。世界中のVI Pに支持されてきた最高級服地の代名詞的ブランドだ。写真:CASHMERE & LUXURY OVERCOATINGS(ネイビー無地 570g/カシミア100% ¥539,000~)
服地に触れるだけでわかる極上の品質。肉厚の100%カシミアは実に見事な仕立て映えを味わえる。贅沢、豪勢といった表現では収まりきらない、豊かな着心地を堪能できる。「カシミヤ素材が多いのですが、それ以外も収められています。高級コート用として有名かつスタンダードなバンチです。イタリアものと比べると、素朴な味わいが特徴です」
4. フォーマル編batakはフォーマルウェアを得意とすることで知られている。スタイルのみならずプロトコルまで鑑みた生地選びをご覧に入れよう。バラシアやタキシードクロスを使ったタキシード、そしてモーニングは紳士たるもの一着は持っていたい逸品だ。
STAND EVEN1885年創業、イギリスのウェストヨークシャーに拠点を置く老舗ミル。幅広い生地を製造し続け、そのクオリティの高さはサヴィル·ロウをはじめ世界中のテーラーから評価されている。1926年にはプリンス・オブ・ウェールズ(後のウィンザー公)がスタンド イーブン社を訪れ、一流のメーカーとして認めたというエピソードも残されている。写真:BLACKSTORM(ブラックタキシードクロス 440g/ウール100% ¥319,000~《スーツ》)
メリノウールで織られた最高級品のタキシードクロス。深みのあるブラック。高密度に織りあげた細番手のしなやかな糸。織り上がりの雰囲気は厚みがもたらす安心感がある。「昔からある当たり前の生地、定番のタキシード用ですが、クオリティの高さは折り紙付き。わりとソフトな生地でもあります。バンチにはシャドウストライプなども含まれています」。
DUGDALE & BROS & CO1896年、英国の毛織物産業の中心地であるハダーズフィールドにて、ヘンリー・パーシーとフレデリック・ハーバート・ダグデールによって創業。後にキース・チャーノックに承継されるまで家族経営を維持した。2000年にはキースの息子、ロブ・チャーロックが経営を引き継ぎ現在に至る。事実上、英国資本による最後のマーチャントである。写真:FORMAL WEAR(ブラックマイクロヘリンボーン 435g/ウール100% ¥236,500~《スーツ》)
シッカリと目の詰まった服地で、正礼服のモーニングコートに最適。英国のフォーマルシーンではロイヤルウエディング、アスコット競馬などの催しに着用されている。「日本では仲人など結婚式が中心でしょうか。モーニングは着る機会は少なくなりましたが、男のフォーマルのなかで最も素敵な装いだと思います。個人的にはタキシードより好きですね」。
本記事は2022年9月26日発売号にて掲載されたものです。
価格等が変更になっている場合がございます。あらかじめご了承ください。
THE RAKE JAPAN EDITION issue 48