バタク中寺 広吉氏が選び抜いた名作生地図鑑

H. LESSER & SONS1924年創業。高品質銘柄のポジションを長きに渡って維持してきた高級ロンドン・マーチャント。「豪奢な仕立て映え」、「滑らかな着心地」、それらを目指して織り上げられた上質な服地を得意としている。厳しい品質基準・検査基準を満たしつつ、モダナイズにも成功している。サヴィル・ロウでもっとも人気がある生地のひとつといわれている。写真：MEDIUM WEIGHT FINE WORSTED SUITINGS（ネイビーチョークストライプ 400g／ウール100% ¥242,000～）

H.レッサー＆サンズのクオリティ·レベルを容易に推し量ることができるバンチ。見事なハリ感、頭抜けた仕立て映えを特徴とする。チョークストライプなど英国の伝統柄を上品に表現している。「昔からある、当たり前のいい生地です。だからこそ、上級者向けともいえる。若い方よりも、ある程度お年を召した方のほうが、お似合いになるかもしれません」。

DUGDALE & BROS1896年、英国毛織産業の中心地でもあるハダースフィールドにて創業。現在も本拠地とするハダースフィールドは英国服地の一大産地。多種多様、高品質な服地を取り扱うマーチャントとしてその名を轟かす。スーパーファインのウーステッドから、コーデュロイ、キャバリー・ツィル、オーバーコートの服地まで幅広いラインナップを展開している。写真：ENGLISH CLASSICS & TOWN CLASSICS（グレイグレンチェック 435g／ウール100% ¥236,500～）

往年の重さ＝435gのヘビーウエイト地。このあたりがダグデール ブラザーズの神髄である。質感・色柄など細部においてもクラシックを求める方に知っておいて欲しい生地だ。「これも昔から変わらない英国らしい生地です。いい意味でちょっと野暮ったいところがある。こういったしっかりした生地を、柔らかく仕立てるのが腕の見せどころです」。

LOVAT1868年、スコットランド、ホーイックにて創業。同地はツイード発祥の地として有名である（ちなみにTweedの語源はTweel（綾織り）の読み間違いからきている）。百年以上続く、同一の製法によるツイード「ETTRICK」、「KIRKTON」、「TEVIOT」の各銘柄を織っている。特筆すべきはその品質とさまざまな色糸をミクスチャーする繊細な色目である。写真：KIRKTON（グリーン オーヴァーペン 500g／ウール100% ¥154,000）

最低6色のワタを混合したトップ染め、ハリのある丈夫な手触り、それらがもたらす安心感は絶大だ。500gのウエイトは日常使いに最適。「英国人のおじいさんが着ているような模様ですが、最近では若い方の間でとても人気があります。セレクトショップなどでも売れているようですよ。街で着るなら、色柄は慎重に考えたほうがいいでしょう」。

HARDY MINNISJohn G Hardyは1890年、J＆J Minnisは1874年に創業。ふたつが合併してハーディ ミニスに。John G Hardyは1930年から英国王室にツイードを供給、かのウィンザー公が愛したグレンチェック、POWチェックもここが作ったとされる。J＆J Minnisは世界最古のマーチャント会社のひとつで、世界中のテーラーと長きにわたる信頼関係を築いてきた。写真：HARRIS TWEED（グレイヘリンボーン 480g／ウール100% ¥176,000～）

肉厚でザックリとした素朴な風合いが魅力。復元力と耐久性に秀でており、10年以上の長きにわたり着用することが可能だ。また着込むほどに味わいが増していくことも、この服地の魅力である。「最終的には柔らかくて温かい毛布のようになり、コートいらず（笑）。昔は40～50代の方に人気の生地でしたが、最近では若い方も普通にお作りになりますね」。