Masterpieces of Fabric 01

名作を生み続けるVBCのイチ押し
いま仕立てるべき、3つの21マイクロン服地

September 2022

イタリアの名門ヴィターレ・バルベリス・カノニコの、今やすっかり代名詞となった“21マイクロン”ウール。
太い特殊原毛を使用し、イタリアの感性で表現された生地は実に秀逸だ。THE RAKEが推す、3つの名作。
photography jun udagawa
styling akihiro shikata

上から順に:ボー・ソレイユ/カヴァーコート/ストレッチジャージー

BEAUSOLEIL〔ボー・ソレイユ〕
イタリアの感性が生んだ
新しい組み合わせの玉虫色
太陽光に反射して玉虫色を生むサンクロス(ソラーロ)も、VBCの手にかかれば、絶妙な色表現となる。特殊な21マイクロンウールを経糸・緯糸とも54番手の双糸にし、しっかり織り上げた“ボー・ソレイユ”は、着込むほどに身体に馴染んでいく楽しみを大いに与えてくれ、クオリティは申し分なし。パープルにグリーンの玉虫の色合いも新しい表現だ。ナチュラルやレッドもラインナップ。370g/m。

COVERCOAT〔カヴァーコート〕
杢糸のメランジと綾目が美しい
洒落者好みの“カヴァーコート”
コート地として広く人気のカヴァートクロスは、まず最初に強度に優れた生地である。“カヴァーコート”と命名されたVBCのそれは、その強度に加え、はっきり出た織りの綾目と糸の色表現が飛び抜けていい。そして何よりメランジ感が大変美しい。こちらも21マイクロンウールを54番双糸にして織り上げているが、高密度ゆえ440g/m。色バリエーションも豊富に揃えている。

STRETCH JERSEY〔ストレッチジャージー〕
クラシック、でも新鮮!
伸縮性に優れたジャージ
従来のジャージー素材は表面がのっぺりとした印象になりがちだったが、VBCの“ストレッチジャージー”の見た目は布帛そのもの。21マイクロンウールの粗野感を最大限に引き出し、立体感溢れる仕上がりとなっている。ポリアミドを混紡したことで、大変優れた伸縮性も実現。もちろん、シワにもなりにくく復元性に優れ、トラベラーには大変重宝する生地である。これぞ新たな名作である。370g/m。

いま仕立てるべき、21マイクロン服地 #1
ボー・ソレイユで
新しい玉虫色を楽しむ

 1990年代のクラシコイタリア全盛期、今は亡きセルジオ・ロロピアーナ氏やアルフレード・カネッサ氏、今日を代表するウェルドレッサーであるマリアーノ・ルビナッチ氏や鴨志田康人氏がサンクロス(スミス・ウールンズが商標をもっているソラーロの名が一般的)で仕立てられたスーツを着ていた姿は、衝撃的なカッコよさだった。

 サンクロスはヘリンボーン織りの生地で、経糸にカーキ、緯糸に赤い糸を用いたものが一般的だ。太陽光に緯糸の赤がいい塩梅に反射して玉虫色を形成し、光の当たる角度によってさまざまな色に見えるその生地は、今や世界中の洒落者たちに愛されるまで、広く浸透するようになった。

 VBCのサンクロス“ボー・ソレイユ”は、特殊な太い原毛“21マイクロン”ウールを経糸・緯糸ともに54番手の双糸にして織り上げられたもので、370g/mのウェイトがある。グレイッシュブラウンの経糸にブルーの緯糸を入れた左のスーツのように、糸の色の組み合わせがクリエイティブで、従来のクラシックなサンクロスとはまた異なる新鮮さを与えてくれる。

“21マイクロン”の特殊な太い原毛を54番双糸にして織り上げられた“ボー・ソレイユ”は仕立て映えもし、正統派の英国スタイルと軽やかな仕立てを実現したリッドテーラーの服とも大変よく合う。グレイッシュブラウンにブルーの玉虫感のクールな色気も新鮮。スーツは国内縫製のメイド トゥ メジャーで、納期は約5週間。スーツ¥214,500~ Lid Tailor(伊勢丹新宿店 Tel.03-3352-1111/日本橋三越本店 Tel.03-3241-3311) シャツ¥33,000(以上オーダー価格)Choya Bespoke(日本橋三越本店 Tel.03-3241-3311) ニットタイ¥19,800 Atto Vannucci(日本橋三越本店 Tel.03-3241-3311) チーフ property of stylist

いま仕立てるべき、21マイクロン服地 #2
英国好きも納得!
重厚で奥行き感のある
カヴァートクロス

 オーダーでスーツを仕立てる人のほとんどは、長く着続けたいと思っているはずだ。そのためには、飽きのこない自分好みの生地を見つけること、その生地が長年着られるだけの耐久性を備えていることがまず大切で、そして自分好みのフィッティング、スタイルを理解したうえで仕立てることが大切である。そういった意味で、カヴァートクロスというのは賢明で、大いにアリな選択だ。

 21マイクロンウールを使用したVBCのカヴァートクロス“カヴァーコート”の強度の高さは触れた瞬間にわかるが、同時にこの特殊ウールのもつしなやかさも感じられる点が、この生地の強みである。また、紡績や染色の工程も自社で行っているVBCだからこその、何とも言えない糸の美しい色表現もいい。経糸・緯糸ともに54番双糸を使用しているが、前ページの“ボー・ソレイユ”よりも高密度で織り上げられているこちらのウェイトは、440g/m。大きな綾、絶妙なメランジ感が、ヴィンテージ感、いい塩梅の都会的なエッセンスを加味してくれる。ラインナップされているチャコールグレイだと、それはより顕著だ。

毎年のようにブラッシュアップされたスタイルへと進化している山口信人氏が仕立てるラ スカーラの服は、次元の高いクラシックだからこその色気を纏うまでになった。重厚で張力に優れた“カヴァーコート”はヴィンテージライクな趣きを備え、両者の融合が神々しい。スーツは国内縫製のメイド トゥ メジャーで、納期は約5週間。スーツ¥214,500~ La Scala(伊勢丹新宿店 Tel.03-3352-1111) シャツ¥22,000~(以上オーダー価格)Otsubo Shirts(日本橋三越本店 Tel.03-3241-3311) スカーフ¥33,000 Anderson & Sheppard Haberdashery(日本橋三越本店 Tel.03-3241-3311)

いま仕立てるべき、21マイクロン服地 #3
ストレッチジャージーを
トラベルの強い味方につける

 常に世界中を忙しく飛び回っているジェットセッターをイメージして作られた“スーパーソニック”シリーズの“21マイクロン・ストレッチジャージー”は、今のリアルなライフスタイルに寄り添った生地だ。

 その名の通りジャージー素材なのだが、VBCの独創的な21マイクロンウールがベースになっているから、ジャージーには全く見えない。ポリアミドを混紡して編まれているため、防シワ性と復元力、たっぷりの伸縮性を備え、長時間の移動時に着用してもストレス知らずである。

 仕立て映えがする生地で、1着で多彩なシーンをカバーしてくれることから、海外への出張や旅行にはもちろん、日常の1着としても大変重宝するはずだ。21マイクロンウールそのものが強靭で、かなりの強撚にしていることから、トラウザーズの膝もヌケにくく、スーツで仕立てられる。

 ジャージー素材に対して懐疑的な方も少なくないと思うが、実際にこの素晴らしい“ストレッチジャージー”で仕立てると、気がついたらこればかり着ている、みたいなオチが待っていそうだ。

ローマ、そしてミラノを拠点に、サルトとして30年以上活躍してきた船橋幸彦氏は、今なお新しいことにも積極的に取り組んでいる、向上心の塊のような方だが、VBCのストレッチジャージーを組み合わせているあたりが非常に興味深い。ドローコード仕様のウエストで、快適さがワンランクアップ。スーツは国内縫製のメイド トゥ メジャーで、納期は約5週間。スーツ¥231,000~(オーダー価格) Sartoria Ypsilon(伊勢丹新宿店 Tel.03-3352-1111/日本橋三越本店 Tel.03-3241-3311) ニット¥83,600 Anderson & Sheppard Haberdashery(日本橋三越本店 Tel.03-3241-3311)

本記事は2022年9月26日発売号にて掲載されたものです。
価格等が変更になっている場合がございます。あらかじめご了承ください。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 48

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