VITALE BARBERIS CANONICO

清涼感のあるミックスウールで服を仕立てる

March 2024

生地の提案力という点で、ヴィターレ・バルベリス・カノニコに勝るところはないかもしれない。今季は清涼感のあるミックスウールを提案しているが、そこから気になる3ファブリックをご紹介。
text yuko fujita
photography jun udagawa
styling akihiro shikata

21μWool & Linen Tropical(左)
防シワ性にも優れたウールリネン
経糸は21マイクロンウール100%の54番双糸、緯糸はリネン100%の39番単糸を用い、21マイクロンウールの経糸と太番手のリネンによって、220g/mのライトウェイトファブリックでありながらしっかり耐久性を備えた、ウール53%、リネン47%による服地。リネン混にもかかわらず、21マイクロンウールの効果によって防シワ性にも優れる。清涼感に溢れ、盛夏の素材として最適な選択肢のひとつであり、スーツで仕立てても大変絵になる。

SUPERSONIC “Natural Stretch Wool Mohair”(中)
ストレッチ性を備えたウールモヘア
「スーパーソニック」は、世界を超音速(スーパーソニック)で移動するジェットセッターのために開発された機能ファブリック。経糸に54番双糸、緯糸に34番単糸のモヘアを用いており、混率はウール85%、モヘア15%。天然素材100%でありながら十分なナチュラルストレッチ性を備え、 タッチはモヘアの特徴を感じられるが、サラッとしている。スモーキーな色合いの展開が多く、ブルー、グレー、セージグリーン、オークル、ブリックレッドなどが揃う。

Linen × 21μ Wool Suiting(右)
混率逆転のリネンウールス―チング
ジャスペ効果(色合いが玉虫のように複雑な様子)のあるリネンの経糸と21マイクロンウールの緯糸を使用してヘリンボーンの生地組織に織り上げられた、「リネン×21マイクロンウール ス―チング」は、色褪せた不規則で複雑な効果を備えたリネン60%、ウール40%によるスーツ用ファブリック。コールドベージュからオレンジ、ボルドー、パープル、ティール、ファーングリーンという美しい色を揃えた多色展開で、ジャケットの生地としても最適。ウェイトは非常にバランスのよい250g/m。

混率逆転のリネンウールでスーツを仕立てるエレガンス
Linen × 21μ Wool Suiting

CIFONELLI経糸に極太の21マイクロンウールをハイツイストした双糸、緯糸にリネン単糸を用いた「リネン×21マイクロンウール スーチング」のライトグレーカラーは、抜群の清涼感。パリの名門チフォネリのスーツもだいぶ違った印象に。スーツは国内縫製のメイド トゥ メジャーで、納期は約5週間。スーツ¥258,500(オーダー価格)Cifonelli、オープンカラーシャツ¥33,000(オーダー価格)Minami Shirts / both by Nihombashi Mitsukoshi(日本橋三越本店 TEL.03-3241-3311) スカーフ¥19,800 Drake’s / Beams F(ビームスF TEL.03-3470-3946)

 ヨーロッパのウェルドレッサーが長けているのは、季節の服の色・素材をごく自然に楽しんでいるところにある。春夏の代表素材といえば清涼感のあるリネンやリネン混があげられ、色はタバコやネイビーブルーが素敵だが、さらに季節感のあるところだと、ライトなトーンのそれがオススメだ。今季のヴィターレ・バルベリス・カノニコ(VBC)は、そのライトなトーンの生地を積極的に打ち出している。

 その筆頭が、碧玉のように複雑な色合いを生むリネンの経糸と、あえて極太の原毛である21マイクロンウールの緯糸を使用してヘリンボーン組織に織り上げた「リネン×21マイクロン スーチング」だ。春夏の代表素材であるリネンとVBCを象徴する21マイクロンウールのいい意味での粗野な雰囲気を組み合わせた同生地は、美しいアイスグレーの色合いも手伝って、抜群の清涼感を放っている。

 ビシッときれいにプレスしてエレガントにタイドアップして着るのもクールだし、リネンウール特有の程よいシワ感を積極的に楽しむべく、あえてクタッと馴染ませて着るのもいい。それがパリの名門チフォネリの上質な仕立て服であるなら、なおさら絵になるではないか。

絶妙なリラックス感を漂わせるウールリネントロピカル
21μWool & Linen Tropical

LORD BYRONペコラ銀座の佐藤英明氏監修のもと2023年秋冬シーズンにスタートしたロード バイロンは、かつての英国貴族が着ていたスーツをオマージュしており、コロニアルな素材感の「21マイクロンウール×リネントロピカル」と相性抜群。国内縫製の仮縫い付きビスポークスーツは納期約2カ月。3ピーススーツ¥672,100(オーダー価格) Lord Byron / Nihombashi Mitsukoshi(日本橋三越本店 TEL.03-3241-3311) シャツ¥25,300 Paul Stuart(ポール・スチュアート 青山本店 TEL.03-6384-5763) タイ¥22,000 Francesco Marino、チーフ¥10,780 Simonnot Godard / both by Beams F(ビームスF TEL.03-3470-3946)

 経糸は21マイクロンウールの低番手の双糸で、緯糸はリネンを用いて織り上げられた平織り生地が、「21マイクロンウール×リネントロピカル」だ。こちらの生地で際立っているのはリネンが生み出す清涼感溢れるサラッとしたタッチの心地よさだ。経糸の強撚による21マイクロンウールがベースになっているのでシワになりにくく、その魅力は初夏に最適な220g/mのライトウェイトでありながら、しっかり耐久性を備えている点にある。盛夏用として最適な選択肢のひとつであるといえよう。

 360年を超える歴史を誇るVBCは、ビエッラ本社に2000冊以上のアーカイブを所蔵し、そこからさまざまな企画を生み出している。紡績、染色、機織、仕上げまですべて自社で手がけ、時に羊の飼育段階から携わり、徹底したリサーチを積むことで、天然素材100%であっても画期的なタッチ・機能性を備えた生地を開発できるのはVBCの大きな強みだ。

 最近はよりナチュラルな雰囲気の生地を打ち出しており、他との差が生まれてより玄人好みな感じがする。「21マイクロンウール×リネントロピカル」も肩肘張らない“こなれ感”みたいな雰囲気があり、実に洒落て見えるのだ。

防シワ性も備えたライトウェイトのストレッチウールモヘア
SUPERSONIC “Natural Stretch Wool Mohair”

HENRY POOLEサラッとした涼し気なタッチに加え、防シワ性とストレッチ性を備えたライトウェイトの「ナチュラルストレッチウールモヘア」はしなやかかつハリがあり、ヘンリープールの服に柔らかさをもたらしてくれる。スーツは国内縫製のメイド トゥ メジャーで、納期は約5週間。スーツ¥286,000(オーダー価格)、タイ¥35,200 both by Henry Poole / Nihombashi Mitsukoshi(日本橋三越本店 TEL.03-3241-3311) シャツ¥69,300 Fray / Strasburgo(ストラスブルゴ カスタマーセンター TEL.0120-383-563) チーフ¥10,780 Simonnot Godard / Beams F(ビームスF TEL.03-3470-3946)

 世界を超音速(スーパーソニック)で移動するジェットセッターのために開発された機能ファブリック「スーパーソニック」の、ウール85%、モヘア15%からなる「ナチュラルストレッチウールモヘア」。VBCは南アフリカのモヘア山羊の牧場を傘下に収め、2021年にレスポンサブル・モヘア・スタンダード(モヘアの牧羊業者が、動物の健康、環境配慮のための基準を順守している証)の認証を取得している。

 その中で積極的にモヘア生地の開発に乗り出しており、こちらは100%天然素材でありながら、特別なレシピでナチュラルストレッチ性をもたせたものだ。ザラッというよりはサラッとしたタッチで、ライトウェイトでありながら、ハリ感がしっかり備わっているのが素晴らしい。さりげない上質が光る昨今のVBCを象徴する生地だ。

VBC FAIR INFORMATION

3月27日(水)~4月9日(火)上記期間中、日本橋三越本店本館2階 パーソナルオーダーサロンにて、VBCフェアが開催される。今回ご紹介した新作はベーシックな色合いのライトトーンファブリックに絞ったが、フェア期間中は他にないVBCならではのカラーバリエーションが並ぶほか、個性が光るVBCのさまざまなマスターピースファブリックが一堂に集結する。仕立て上がりのスーツもトルソーで展示される予定だ。