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アーカイブが語る007
August 2020
special thanks to Eon Productions and the London Film Museum
『007/死ぬのは奴らだ』のロジャー・ムーアとジェーン・シーモア。
「私たちの所蔵している最古の品で、最近取得したばかりなんです。60年代の映画制作者は何もかも処分して資産を換金していましたから、この作品の小道で残っている品はわずかでした。オークションで買い戻すか、誰かがリサイクから救ってくださったものばかりです」
保存対象物に対して歴史学者のような愛情を注ぐメグは、ひとつの物から世界全体を思い描く想像力を持っている。それが傷んだ鉛色のブロックだとしても。.
「これは『007/ゴールドフィンガー』で使われたものです。セットで使われた金塊のうち、現存が確認されているのはこれだけ。“To Gwyn(グウィンへ)”というショーン・コネリーのサインが書かれているのは、グウィンの母親がこの映画のセットデコレーターだったからです。この品は珍しいルートでアーカイブにやって来ました。私の末娘の友人の母親が、グウィンの友人だったのです。当時グウィンはまだ子供で関心がなかったので、喜んでアーカイブに寄贈してくれました。セットで使われた金塊はそれほど多くなかった。正確な数はわかりませんが、プロダクションデザイナーのケン・アダムと話したとき、彼はほとんど模造したと言っていました。予算は潤沢でしたが、すべての金塊を1本ずつ制作すればさすがに高額になったでしょう。金の殿堂をつくるという希望を受けて、積み重ねた状態の金塊に見えるように作られたのです。とはいえバラバラの金塊も少しは必要でした。この金塊はアーカイブにある図面と一致します。非常に希少な品ですね」
希少な品を取得したときにメグが喜びを覚える理由としては、イーオン・プロダクションズのアーカイブが1995年にようやく設立されたことが大きい。1995年といえば、超大国のにらみ合いが終結した不均衡な世界において、ピアース・ブロスナンがボンドを演じることでシリーズが再始動した年である。ただし、ボンド映画にはそれよりもずっと前からお約束の文化があった。各種のガジェット類、ディナージャケット、シェイクしたカクテル、カジノの場面、短いダジャレ、風変わりで身振りの大げさな妄想癖のある悪役、さらに風変わりで身振りの大げさなガタイのいい悪役、アストンマーティン、続々と現れる美女、そしてもちろんフィナーレの爆発である。