LIVE AND LET LIVE
アーカイブが語る007
August 2020
special thanks to Eon Productions and the London Film Museum
『007/ドクター・ノオ』のワンシーン。
007はフレミングのあらゆる経験を通して生み出された世界である。セシル・ビートンによって撮影された写真に写るのは、彼が蝶ネクタイをし、紙巻きタバコ用パイプを手に持って、デカンター数点、カクテルシェーカー、上等のグラスが所狭しと並ぶテーブルの前でゆったり座っている姿。『ドクター・ノオ』が封切りを迎えた1962年のことである。
そんなフレミングがボンド役に希望していたのは、映画界随一の英国紳士であるデヴィッド・ニーヴンだったという。一方で、プロデューサーのカビー・ブロッコリはもう少し派手にしたがった。フレミングの伝記を執筆したアンドリュー・ライセットは、こう記している。
「ブロッコリは最初に監督に指名したガイ・ハミルトンに対し、原作は戯言まみれなので修正するつもりである、と告げた。彼はあらゆる空想的要素を取り入れたがり、ノオ博士をサルとして描くなどを考えていた。ハミルトンはそのときは結局監督の仕事を断ったが、映画化の魅力はイアンの描くディテールにあることを彼にわかってもらおうとしていた」