Jet-set Gigolos

世界を股にかけた、ジゴロ伝説

August 2015

by james medd

新婚のティエリー・ルーセルとマリアンヌ・ランドハーゲ。ティエリーの5歳の娘アシーナ(中央)と、夫妻の3歳になる娘サンドリーヌ(母親に抱かれている)もブライズメイドを務めた。

 マーガレット・ド・クエバスがバレエ団を閉鎖することになり、彼は新たなパトロンとして伯爵夫人ジャクリーン・ド・リブと親しくなった。伯爵夫人がバレエ団に嫌気を感じるようになると、彼はヴォーグ誌やライフ誌のカメラマンに転身する。

 その後マーガレットの元へ戻るのだが、その頃すでに「おばさん」はミス・ハヴィシャム(ディケンズ作『大いなる遺産』に出てくる、なかば常軌を逸したような老婦人)のような姿に変わり果てていた。

 風呂もろくに入らず、白粉がこびりつき、寝室用のスリッパを履いた彼女は、貴婦人というよりはホームレスに近かった。レイムンドは、彼女の身なりを整えて社交界に戻れるように取り計らう。

 そして1977年、42歳のときに、80歳の彼女と結婚した(結婚式では、車いすと新しい歯をプレゼントしたという)。 1985年にマーガレットがマドリードで亡くなってから、骨肉の争いが始まった。マーガレットの子供のエリザベスとジョンが、すべてを夫に委ねるとした彼女の遺言に異議を唱え、レイムンドが「病気の高齢女性の信頼を利用した巨額の詐欺」を働いたと主張したのだ。

 これに対し、レイムンドは、「マーガレットは子供たちに見捨てられたと感じており、すでに彼らには十分な額を与えている」と反論した。

 2年後に判決が下り、両者で遺産を半分ずつ分けることになった。金額は、誰の言い分を信じるかによるが、1600万米ドルから6000万米ドルの間のようである。

 この半分の遺産を使えるようになってから、わずか1年でレイムンド自身も亡くなった。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 04
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