‘IT’S THE CLOSEST I’LL EVER GET TO BEATLEMANIA’

俳優:マーティン・フリーマン
ロングインタビュー

October 2018

シャツ Mark Powell
ニットタイ Ralph Lauren Purple Label
シルクのポケットチーフ Budd Shirtmakers
靴「バーリントン」 Gaziano & Girling
スーツ Mark Powell 本人私物

「僕たちが使った偽物のベーカーストリートのセットは、『シャーロック』ファンの聖地になった。そこでの撮影は、後ろで映画のプレミアが行われている中で、ロケをしようとするようなもの。ちょっとしたビートルズ狂みたいな、あれほどの熱狂状態を味わうことは二度とないと思う。きっと一部のファンにとって、僕たちはバンド同然なんだ。あれほどの献身的な愛情と忠誠心は見たことがない」

 それほど人々を魅力した理由は何だったのだろうか。

「分からないし、それでいいと思ってる。この作品についてとても誇りに思ってるんだ。素晴らしい脚本と映像。そして共同クリエーターのスティーヴンとマークは、アーサー・コナン・ドイルの大ファンだった。僕らは誰も、こんな人気作になるとは思ってもみなかった。分かっていたのは、僕らは皆この作品が好きだっていうことだけ」

 彼の演じたワトソンとカンバーバッチのホームズの間にエネルギーが生じたことは、思いがけない幸運だった。世界が誇る最高の俳優ふたりを揃えても、相性が良くなければ、このエネルギーは生まれなかっただろう。

「とてもラッキーだった。僕たちふたりが台本の読み合わせを始めたとき、すぐにそれは判明したよ。すでにベネディクトのキャスティングは決まっていたんだけれど、ドクター・ワトソン役には候補が何人かいたようで、その中のひとりが僕だった。でも、明らかにすべてが良くなったんだ。素晴らしい脚本がもっと良く感じられた。僕らはお互い、鍵穴に鍵を差し込むように、相手がしていることにぴたりと調和することができたからね」

本当の恐怖を伝えるために 『アイヒマン・ショー/歴史を映した男たち』は極めて重要な映画だと、フリーマンは言う。ホロコーストの恐ろしさを世界に知らしめるために放送されたテレビ番組をめぐる出来事について描かれているからだ。

「当時、アドルフ・アイヒマンの裁判が行われた頃は、すべてが終わって別のものに変わった瞬間だった……もっと畏敬の念を感じさせるようなものにね。それはきっと、僕らがいま言う『二度と繰り返してはいけない』という次元のものだ。でもそれは、規模こそ小さいが、それ以降も明らかに起きているし、これからもずっと起こり続けるだろうね。この映画の撮影中、役者たちが当時の映像を見ているリアクションをカメラに収めたんだけど、あれはとてもハードだった。聞くのも嫌なくらい」

 彼は、監督のポール・アンドリュー・ウィリアムズを説得して、『アイヒマン・ショー/歴史を映した男たち』の撮影で実際にカメラを回すときに、キャストが初めて本物の映像を観るようにしたのだ。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 09
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