‘IT’S THE CLOSEST I’LL EVER GET TO BEATLEMANIA’

俳優:マーティン・フリーマン
ロングインタビュー

October 2018

シャツ Brooks Brothers
ニットタイ Ralph Lauren Purple Label
ウール×カシミアのポケットチーフ Anderson & Sheppard Haberdashery
靴「ハーバード」 Crockett & Jones
スリーピーススーツ Mark Powell 本人私物

幸せとは普通であること 安易な誇張表現を軽蔑するマーティン・フリーマンだが、仕事上のポジションとしては今非常に良いところにいる。それは、ここまで読んでくれた読者ならご存じのとおりだ。このアルダーショット出身の44歳の男が一番に求めているものは普通っぽさだというのに、彼のキャリアは熱圏にまで達しそうな勢いで伸びていき、彼の理想からは離れる一方だ。幸せとは、自分の人生がもはや普通じゃないと分かっていながら、普通の人たちがするようなことをしていることだと彼は言う。

「実際、僕は普通の人間ではない。だからごく普通の生活を求めるんだよ。僕自身は、自分が普通の人間だって思いたいけど、1日に18回くらいは普通の人間ではないことに気づかされるからね。人々が僕に求めるものは、僕の従兄弟に求めるものとは違うのさ。実際に、話したり書いたりしたことは全部、プレス声明でも出したかのように世間に広まってしまう。今だって、自己検閲しながら話しているんだ。もともと僕は口が軽いし、飽きっぽいから、つい本当のことを言ってしまう。一度そのせいで痛い目にあったことがあるよ。でも、僕自身としては、別に大勢の人に話したいわけじゃないんだ。話したことは何でも知られてしまうし、流出してしまうからね」

ソーシャルメディアを嫌う理由 ペラペラと本音を喋ることに慎重な人間なようだ。それに対し、世間は脈絡のない議論の種を心待ちにしている。そう考えると、彼がソーシャルメディアを敬遠するのも当然かもしれない。

「今どきの人たちは、ひと昔前の日記みたいにツイッターを使っているよね。こんなふうに感じた、こんなふうに思った、ってね。僕がやったら、やばいことになると思うよ。僕のキャリアは数分で水の泡だ。そもそも人生に必要なものだとも思わない。たしかに、プライバシーや自己防衛というのも理由のひとつだ。僕はこれまでずっと、プライバシーを守るためなら戦いも辞さないという姿勢でやってきた。一度瓶の外に出てしまったものは、戻せないということを僕は知ってる。そうなってしまった人たちを見れば分かるよ」

THE RAKE JAPAN EDITION issue 09
1 2 3 4 5 6 7 8

Contents