January 2021

INTRODUCING THE HANHART × THE RAKE & REVOLUTION LIMITED EDITION
BRONZE 417 CHRONOGRAPH

スティーヴ・マックイーンが愛した時計

text wei koh

マックイーンの417ES マックイーンがこの時計を所有することになった経緯は謎である。ただ、彼がもともと模範的なセンスの持ち主であったことは明らかだ。モーターサイクル、クルマ、ビスポークスーツなど、彼にまつわるあらゆる物事がそれを示している。ゆえに彼がハンハルトの417に自然と心惹かれたのも至極当然である。なお、彼の417は“ES”だったと考えられている。この時計を着ける際は大抵、 “ファットストラップ”と呼ばれるブンドタイプのストラップを使用していた。

 417に対するマックイーンの愛情がはっきりと見て取れたのは、彼が1964年にモーターサイクルレースの専門家であるイーキンス兄弟とともに東ドイツへ行き、インタ復刻の呼び声高き、伝説のクロノグラフーナショナル・シックス・デイズ・トライアル(ISDT)で米国代表を務めたときだ。耐久モーターサイクルレースのオリンピックと評されるISDTは、男性5名で構成されたチームを世界の国々から招いて、オフロードでの技を競い合うものだった。当時、マックイーンが米国屈指のバイク乗りだったのは有名な話である。

 マックイーンは1963年の『大脱走』でもスタントの大部分を自分で演じた。ただし鉄条網を飛び越える有名なジャンプシーンは、彼のスタントマンであり、ISDTでのチームメイトだったバド・イーキンスが演じている。“カリフォルニア・ボーイズ”と呼ばれた1964年のこのチームは、ISDTで競技した初めてのアメリカチームであり、マックイーンは開会式で星条旗を運ぶという栄誉ある役割を担ったのだ。

 マックイーンは腕比べとなると悪名高いほどディテールにこだわった。ISDTのレース前、自分のトライアンフをロンドンまで引き取りに行き、必要な修正をその場ですべて自ら行ったという。そんな彼なのだから、時計も同様に吟味され、こだわり抜かれていたに違いない。

本記事は2020年11月25日発売号にて掲載されたものです。
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THE RAKE JAPAN EDITION issue 37

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