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“THE RAKE”に愛された男、ディエゴ・デッラ・ヴァッレ
October 2018
photography emanuele scorcelletti
Diego Della Valle / ディエゴ・デッラ・ヴァッレ1953年、イタリア、マルケ州生まれ。トッズ・グループ会長兼CEO。デッラ・ヴァッレ家は家族経営の靴工房を経営していたが、ディエゴは1979 年、“ゴンミーニ”の大ヒットによりブランドを拡大。2000年にトッズ・グループを設立してミラノ証券取引所に上場した。
トッズは世界有数の大ブランドである。ロジェ ヴィヴィエ、フェイ、ホーガンなどを擁するグループ全体の売り上げは、2017年には9億6300万ユーロに達した。世界のラグジュアリーグッズを扱う上場企業100社の中で、42位にランクされる巨大コングロマリットである。
トッズがここまでに至るには、長い道のりを経ている。現会長兼CEOディエゴ・デッラ・ヴァッレの祖父にあたるフィリッポが、マルケ州に小さな靴工房を開いたのは20世紀初頭のことだった。二代目のドリノは商才に長けており、70年代までにはトッズはNYのニーマン・マーカスやサックスといった一流デパートと取引するまでに成長していた。アイコンである“ゴンミーニ”は、デッラ・ヴァッレが渡米中に思いついたものだという。
「若い頃アメリカにいた時、ドライビング用シューズに目が留まりました。それは製品としては酷いものでした。クオリティは低く、作りは安っぽかった。しかし、その靴は私にヒントをくれたのです。私は“足のための手袋”のような靴を作りたいと思いました。私はその靴を買って帰り、父にアイデアを打ち明けました。そして父は、製造を許してくれたのです」
デッラ・ヴァッレには、マーケティングの才能があった。彼はできあがった靴を、セレブたちへ送ったのだ。今では当たり前になった手法だが、当時はそんなことをしているブランドはなかった。その中には、イタリアのファッション・アイコンとして知られる“THE RAKE”(=ジャンニ・アニェッリ)も含まれていた。