Davide Taub Interview
ダヴィデ・トウブ インタビュー
January 2021
ブランドの神髄、ビスポーク部門を率いるヘッドカッター、ダヴィデ・トウブ氏によるアーティスティックなテーラーリング哲学のすべて。
Davide Taub / ダヴィデ・トウブロンドンのテーラーの家系に生まれる。大学で建築を学んだ後、テーラーリングに目覚め、2000年からカシュケットに。老舗テーラーを経て、12年にギーヴズ&ホークスのヘッドカッターに就任。ミリタリーを意識したシャープで現代的なラインに定評がある。
この道15年のキャリアを持つ若きヘッドカッター、ダヴィデ・トウブ氏。この日のインタビューに着用していたのは、ダブル・ブレスティッドの6ボタン、ブラック・シルクのスーツだった。
構築的でシャープなショルダーラインとロープド・スリーブヘッド、ダブル・フロントダーツの入ったスーツは、絞り込んだウエストとバックラインが見事にフィットしている。このスーツにはシルク100%の素材が持つラグジュアリー感と、ミリタリーを思わせる男の服の威厳があり、同時に、そこはかとないエレガンスが漂っていた。
「顧客ひとりひとりに合わせるのがビスポーク。決まったハウススタイルは特にない」と語るが、この日のスーツには、現在のギーヴズ&ホークスのビスポーク哲学が見てとれる。それはトウブ氏のこれまでのキャリアによって築き上げられたものにほかならないだろう。
トウブ氏はロンドンの老舗ミリタリー・テーラー、カシュケットでそのキャリアを開始した。次に、サヴィル・ロウのテーラー、モーリス・セドウェルではテーラーとしての天賦の才能が認められ、若手テーラーの登竜門ゴールデン・シアーズ賞においてベストメンズウェア賞を受賞。
さらに、トミー・ナッターの右腕として知られたエドワード・セクストンでアシスタント・カッター、復帰したモーリス・セドウェルではヘッドカッターを務めた。両社ともコンフォート(快適性)と華やかさを追求したテーラーであるだけに、そのスーツにはイングリッシュ・テーラーリングらしい構築的な仕立てやギーヴズ&ホークスの膨大なアーカイブに由来するミリタリー・テイストに加え、見た目からは想像できない柔らかな着心地が備わっている。
「テーラーの仕事は顧客を理解することだ。着用したときに快適であり、ひとりひとりがスーツで自身を表現していること。機能的なのか、ポケットは正しい位置にあるか、よくフィットしているか。日本人のビジネスマンがイタリアン・プレイボーイに見えるのでは意味がない。各自の個性を反映させた美しさこそ、我々が目指すビスポークであり、そのために我々の技術があると考えている」
完全無欠を目指す、スーツの哲学 ビスポークの仕立てにおいて重要なものはなにか? その問いに「カッティングにおいても、仕立てにおいても重要なものはインテグリティ」、そうトウブ氏は語る。その言葉が意味するものは完全無欠、高潔、清廉、誠実だ。
「サヴィル・ロウの仕立てもこの言葉に集約される。200年の歴史を超えるサヴィル・ロウで、人の手から作られる最高峰のクラフトがビスポーク・スーツだ。平面で壊れやすい生地から、三次元の人間の身体を包み込む立体を作り上げる。どのスーツも異なり、すべてのスーツが難しい。実際には完璧なスーツなど存在しない。ビスポークは我々の創造性と技術力の統合によって作られている。どうしたらもっとよいスーツが作れるか、毎日がその繰り返しなんだ」
トウブ氏が自らのテーラーリングにかける情熱を語る、その語り口は飽くまで謙虚であり、昔ながらの真摯な職人の姿勢を彷彿とさせる。
加えて、現在ヘッドカッターであるトウブ氏に求められるのは、個人の技術の研鑽ばかりではない。ビスポーク部門で働く全員をチームとして統率し、最上級のスーツを作る、その士気をチーム全員に浸透させることだという。
「それにはスーツ作りに明確なヴィジョンを示し、顧客、生地商、職人、スーツの仕立てに関わるすべての人々に敬意を持って仕事することが不可欠となる」
サヴィル・ロウで働くことはテーラーにとって特別な意味があるという。この小さな通りに最高峰のテーラーが集い、世界中から超富裕層がやってくる。そのブランド価値はまさに唯一無二だ。しかし、トウブ氏が語るのは最高級のラベルとしての価値だけではない。
「サヴィル・ロウでは誰もが知り合いなんだ。ランチで会ったときにも、今作っているスーツについて話し合う。我々は競争もしているが、むしろ、ここで技術と情熱、伝統を共有している。私が目指すのはこの伝統を継承し、技術を向上させ、現代的な自分の美学を加えることだ」
他のテーラーとは一線を画す巨大な規模を持つギーヴズ&ホークス。だが、地下のこのワークルームでビスポーク・スーツが作られる伝統は他のテーラーとなんら変わりがない。240年を超えるテーラーリングの歴史は、ここサヴィル・ロウ1番地において今も継承されている
本記事は2015年5月23日発売号にて掲載されたものです。
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THE RAKE JAPAN EDITION issue 04
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