ADVANCE AUSTRALIAN FLAIR

俳優:ジョエル・エドガートン
オーストラリアからやってきた才能

June 2019

text tom chamberlin
photography gavin bond
fashion direction jo grzeszczuk

ネイビーのコート¥146,000 AMI Alexandre Mattiussi
チャコールグレイのスーツ 参考商品
シャツ 参考商品 both by Ralph Lauren Purple Label
ニットタイ Budd Shirtmakers

「アメリカへたどり着くまでの間、次のチャンスを作るために何度も生命線を断ち切った。恐ろしかったよ。せっかく仕事のオファーが来たのに、次の挑戦を探しているという理由で断っていたんだ」

 誰かの俳優人生が終わりを迎えているように見えたとき、新人は成功の予感に浮かれてしまうものだ。エドガートンも例外ではない。その後数年間、彼のキャリアは山あり谷ありだった。

「初めて映画の仕事が決まったとき、『これで前へ進める!』と思った。けど、あっという間にどん底生活に戻ったよ」

『スター・ウォーズ エピソード2/クローンの攻撃』でのオーウェン・ラーズ役など、脇役を務めたこともあった。『ケリー・ザ・ギャング』ではアーロン・シェリット役でヒース・レジャーと共演。『キング・アーサー』では、長髪スタイルのガウェイン役。『キンキーブーツ』では、キウェテル・イジョフォーとダブル主演を果たした。

 着実にキャリアを重ねていく中でも、彼は自分の道が約束されているとは考えていなかったかもしれないが、だからといってぐずぐずと自己憐憫するようなタイプでもない。「ミクロな映画文化しかない」母国へ戻ると、自身もメンバーを務める映像作家集団、ブルー・タン・フィルムズの一員として短編映画の製作に取り掛かった。そして2005年から2010年までの間、3本の短編と2本の長編映画で、脚本、出演、製作に携わった。『アニマル・キングダム』(2010年)もそのひとつだ。この作品がきっかけとなり、彼はアメリカで注目されるようになった。

俳優の年齢の重要性 2011年、ヒット作『ウォーリアー』でトム・ハーディとともに主演を務めると、エドガートンのキャリアは完全に軌道に乗り始める。この作品は、『レイジング・ブル』や『ロッキー』、『ザ・レスラー』、『ファイティング・キッズ』などをヒントに作られた総合格闘技映画だ。エドガートン演じるブレンダン・コンロンは、格闘家から教師に転身し、再び格闘家となり、トム・ハーディ演じる離ればなれに育った弟と戦いを繰り広げる。ギャヴィン・オコナー監督は、まるで予知していたかのように、現在のトップ俳優ふたりをキャスティングした。

『ウォーリアー』は、スクリーンを通じて人々をどう描くかという点で、今の時代の流れをうまく捉えた作品である。マッチョな筋肉が主流の1980年代と、『トッツィー』でのダスティン・ホフマンの繊細さが、互いに矛盾することなく融合している。また、単に悪者を倒すという願望だけでなく、家族を養えないというつらさが物語に深みを与えている。

バズ・ラーマン監督による『華麗なるギャツビー』(2013年)。

本記事は2017年3月24日発売号にて掲載されたものです。
価格等が変更になっている場合がございます。あらかじめご了承ください。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 15

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