御堂筋の「W大阪」に泊まる──大人には遊び場が要る
November 2026
text by AYA HASEGAWA
大阪の中心を貫く御堂筋沿いで、圧倒的な存在感を放つ「W大阪」。黒く寡黙なガラスの塊の中は、大人が肩の力を抜き、無邪気になれる時間を過ごせるステイ先だ。そしてそこは、鉄板が鳴り、トニックが選ばれ、音楽に身をゆだねることができる紛れもない大人の遊び場でもある。
寡黙な外側と、「WOW」な内側
W大阪は、大阪の背骨とも言うべき御堂筋沿いに位置する。黒を基調としたシックな佇まいは、華やかな心斎橋にあっても目を引く。御堂筋では希少な全面ガラス張りで、近づいていくと、東と南の壁面にそれぞれ4箇所の凹凸があることに気づく。どこか彫刻の気配を漂わせている、この建物のデザインを監修したのは、世界にその名を轟かす安藤忠雄。大阪が生んだ建築家だ。建物の目の前では、クロムボールのWサインが輝いている。
一歩踏み入れれば、鮮烈な色に満たされた回廊が出迎えてくれる。「アライバルトンネル」と呼ばれるこの通路は、3000枚もの円形プレートで構成されているのだとか。回廊を彩るネオンの色は季節ごとに移ろう。日常と非日常の境目に用意された、粋な演出に心が華やぐ。
「W」という、インパクトのあるブランド名は、一説には「Whatever/Whenever」に由来するとか。その名にふさわしく、ゲストを最大限にもてなしたいという思いを、随所に感じることができる。例えば、ロビーに並ぶ、オリジナルのこけしは、宮城・鳴子の桜井こけし店がこのホテルのために手がけたもの。年齢も性別も国籍も問わず、すべての人を迎え入れるという意味合いを持つ。なお、同じこけしは各客室にも置かれている。
大阪の真ん中で“こもる”という贅沢
客室は50室のスイートを含む全337室。バー&レストランが6軒、スパ、フィットネス、屋内プールまでが揃い、街の真ん中にいながら、丸1日建物から出ないという選択が成立してしまう。
最上位に位置する「ペントハウス」は、最上階の27階に構え、200平米超、天井高4.5メートル。ダイニング、バー、オープンキッチンを含む5つの空間がひと続きになった部屋は、“住居”の域を超えていた。ラグジュアリーブランドの発表会やプライベートパーティの舞台として使われることも少なくないそうだ。中央に据えられたバスタブは、鏡のように磨き上げられたステンレス製。ここで湯に浸かる自分を想像すると、少し気恥ずかしい気分にもなるが、すぐに「悪くないかも」と思い直した。
スタンダードの部屋も抜かりはない。心斎橋を見下ろすバーカウンターを配した客室は、遊び心と実用性が同居している。床から天井まで一面の窓を背にグラスを傾ける──。ホテルの部屋にバーカウンターを置くという発想が、なんとも粋だ。そして、このバーカウンター、意外にも仕事がはかどる。なお、客室のテーマカラーは、階によって異なり、偶数階は大阪の海を映したブルー、奇数階は市の花である桜のピンクで統一されている。
鉄板の前で、大人は饒舌になる
6軒のバー&レストランは、やはり「W大阪」、どれも一筋縄ではいかない。今回、足を運んだのは、1階の鉄板焼「MYDO」。W香港を手がけた森田恭通が空間を設計し、黒田征太郎が大阪らしい諧謔をたたえたアートワークを描いた。名だたる二人が同じ皿の上で握手をしているような、稀有な店だ。
カウンターは3つの領域──、気軽に鉄板と向き合うFUN、シェフ厳選の食材でコースを組むLUXE、そして鉄板が割烹の板へと姿を変えるKAPPOに分かれる。同じ鉄板を使いながら、供される料理も佇まいもまるで違うのが面白い。黒毛和牛や海鮮が並ぶ一方で、お好み焼き、鉄板で仕上げるオムナポリタンといった品書きが当然のように同居している。格式と気安さを、同じ鉄板にのせてしまう。それこそが、大阪の流儀なのかもしれない。
ウイスキーと割り材をチョイスする
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屋内プール「WET」に隣接するプールサイドのバー「WET BAR」には、今年4月、「JAPANESE HIGHBALL STAND」が誕生した。ここでは、ウイスキーだけでなく、割り材も選ぶことができる。炭酸の強度、水のミネラル感、そして添えるコンディメント。組み合わせを変えれば、同じウイスキーが表情を変える。自分で選ぶのが難しければ、ウイスキーコンシェルジュが気軽に相談に乗ってくれる。銘柄の格ではなく、組み合わせの妙で遊ぶのが楽しい。同ホテルとしては初となるボトルキープ制度も導入。だし巻き卵やビーフフィレカツサンドといったフードもオーダー可能だ。
個性的なイベントも要チェック
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「目的地となるホテル」を掲げるW大阪では、年間を通じてさまざまなイベントを実施している。2026年3月には、開業5周年を記念し、「W FES」を開催。グラミー賞ノミネート歴を持つWh0がターンテーブルの前に立った。7月には、ヘッドライナーに“サムライ・ギタリスト”ことMIYAVIを迎え、「W Sound Wave by Marriott Bonvoy」を実施。ステージと客席の距離が近いこの空間で、音を聴くのではなく浴びる一夜となった。プレミアムシートには「MIYAVI SAKE」の純米吟醸が一本添えられ、会員向けプログラムではシャンパントーストを伴うミート&グリートを用意。ホテル全体が祝祭ムードに包まれた。存分に飲み、踊り、そのまま部屋に戻って眠る──。究極の夜遊びが、この一棟の中で完結する。
光の中で泳ぐ
朝食にも心が躍る。御堂筋を見下ろしながらの朝食。焼き鮭も味噌汁もエッグベネディクトも並ぶなか、たこ焼きが涼しい顔で控えている。最後まで、この街は笑いを手放さない。
1泊ではとても遊び尽くせないが、プールに行くのもお忘れなく。4階の屋内プール「WET」は全長20メートル。天井に仕込まれたネオンが水面に映り込み、昼は青、日が落ちれば青と桃色が混ざり合う。光の中に身を沈める場所で泳ぐ──、そんな贅沢な時間をぜひ味わってほしい。隣接するオープンエアのテラス「WET DECK」とはガラス戸で仕切られ、これを開け放てばプール、デッキ、バーの3つが地続きになる。
なお、全客室には本誌が置かれている。遊び方を知る紳士のための一冊が、大人の遊び場の枕元にある、とても理に適った話ではないだろうか。
W大阪
大阪市中央区南船場4-1-3
TEL 06-6484-5355
https://WWW.marriott.com/ja/hotels/osaoW-W-osaka/












