STATE OF DRESS: JOHN F. KENNEDY
ジョン・F・ケネディの装いの秘密
July 2025
サルトリアルの伝統主義者か、またはレイキッシュなルール・ブレイカーか? 史上最もエレガントといわれた、アメリカの第35代大統領のスタイルを検証してみよう。
by josh sims

「スタイリッシュな米国大統領は?」と問われて、「ジョン・F・ケネディ」と言うのは、ほとんど反射的な反応だ。それは、もっともな話である。
ケネディは、大統領がどのように見えるべきかについて、型破りな存在だった。若くてハンサム。仕事でもレジャーでも、快適そうに洋服を着こなしていた。何を着ても“JFK”だった。
それはケネディ・スタイルの神話化の象徴でもあった。死後数十年にわたる彼の社会への影響は、これら3つのイニシャルに帰着する。 “JFK”は、“ジョン・フィッツジェラルド・ケネディ”よりも、よほど有名になった。
ジョンと妻のジャッキーは、素晴らしいカップルだった。ケネディのスタイリッシュさは栄光を反映し、洗練され革新的なドレッサーである妻は、輝いていた。ふたりが一緒にいると、実に見栄えがよかった。彼らはホワイトハウスのカップルとして、最初の“セレブリティ”といえる存在となり、彼らの写真は、ほぼ無限に供給され、ケネディのファッショニスタとしての評判も鰻登りだった。
しかし実際は、ケネディのスタイルは彼の世代の多くの男性がやっていたことを、代表してみせただけだった。彼は当時のハイクラスの人々がしていたように、シンプルに服を着た。それはアイビーリーグのスタイルに大きな影響を受けていた。実際、“プレッピー”は、20世紀のメンズウェアの中で、最も長く影響力を保つスタイルだといわれることがある。
ケネディがオフタイムに着ていた、ボタンダウン・シャツ、チノーズ、グレイのスエットシャツ、サドルシューズ、レザーのパイロットジャケットなどは、メンズウェアの規範となった。だがそれらは、当時の誰もが着ていたアイテムである。
同様に、彼のオンタイムの服装、ナローなネクタイ、スリムフィットのスーツ、ローファーなどは、彼の父親世代にとっては異質だったかもしれないが、彼の仲間にとっては、特に進歩的なものではなかった。

時代は1960年代であったことを忘れないで欲しい。ポップカルチャー革命は、もうすぐそこに迫っていた。そのムーブメントに多くの大統領が影響を受け、何人かは自らのスタイルに取り入れた。
いまでは忘れ去られているが、ジミー・カーターの牧場での格好は、デニムにぼろぼろのカーディガンというものだった。ジョージ・H・W・ブッシュは、ウインドブレーカーを羽織ってフィッシングに出かけた。イメージの力を知り尽くしていたハリウッド出身のロナルド・レーガンは、白いTシャツ、ビーニー、オレンジ色に着色されたサングラスという出で立ちだった。スティーブ・マックイーンも真っ青である。








