FERRARI 12CILINDRI SPIDER
天下一品の快楽エンジン:フェラーリ「ドーディチ・チリンドリ」
May 2025
フェラーリのフラッグシップモデル、“ドーディチ・チリンドリ”。ベルリネッタに続いてスパイダーの生産がいよいよ始まった。日本上陸を前にポルトガルで自動車ライターの西川淳がテストする。
text jun nishikawa
FERRARI 12CILINDRI SPIDER(フェラーリ 12チリンドリ・スパイダー)
2024年5月のマイアミ・デザインウィークで発表されたマラネッロの新型フラッグシップモデル。その名もズバリ12気筒=ドーディチ・チリンドリだ。ベルリネッタ(クーペ)とスパイダーが同時にデビューした。エンジン:6496cc V12DOHC 最高出力:830PS(610kW)/9,250rpm 最大トルク:678Nm/7,250rpm 全長×全幅×全高:4,733×2,176×1,292mm 最高速度:340km/h 乾燥重量:1,620kg ¥62,410,000~ Ferrari
降り注ぐV12サウンド。驚くほど力強くスムースな加速。とんでもないハンドリングパフォーマンス。世のクルマ好きにとって、これほど愉悦に満ちたドライブ体験など他に見当たらない。
愉悦のドライブパートナーの名はドーディチ・チリンドリ・スパイダー。ドーディチ・チリンドリとはイタリア語で12気筒を意味する。スパイダーはもちろん、オープンモデルのこと。昨年5月にマイアミ・デザインウィークにてワールドプレミアされたフェラーリの最新型フラッグシップモデルだ。
今どき6.5リッターのV12自然吸気エンジン(過給機も電動モーターアシストもなし)を誇らしげに積んだ2シータースポーツカーを生産するメーカーなどフェラーリ以外には最早ない。だからといって時代遅れとは言わせない。なぜならフェラーリはその誕生時からV12エンジンを積んだスポーツカー(であり、1950年代は多くの場合、レーシングカーも兼ねていた)を造り続けてきたのだから。フェラーリにとって12気筒エンジンは欠くべからざる歴史的アイテムでもあった。
先にデリバリーの始まったベルリネッタ(クーペ)に続き、スパイダーの生産もいよいよ立ち上がる、というわけで、日本マーケットへの導入を前に一足早く、ポルトガルはリスボン郊外で国際試乗会が開催されることに。
試乗車は落ち着いたヴェルデ・トスカーナ(グリーン)のボディにテッラ・アンティカというブラウン系のシックなレザーインテリアをコーデしたスペシャルな一台だった。
ルーフがすっかり青空に変わるまでおよそ14秒。ちなみに時速45km以下であれば走行中でもルーフの開閉は可能だ。クーペでは比較的おとなしく唸っているように聞こえたV12も、ルーフを開けてしまえばサウンドがダイレクトにコクピットへと降り注ぐ。このサウンドシャワーがたまらない。
思い通りに動く前輪と腰とつながったかのような後輪のおかげで低速域からマシンとの一体感を存分に楽しむ。ルーフを開けても車体の剛性フィールは変わらず、多少路面の荒れた道を抜けても不安になることがない。乗り心地はクーペよりも少しよいように思われた。
心地よいV12サウンドを浴びながら、ロカ岬へと続く海岸線を走った。音に加勢された加速フィールが素晴らしい。九千回転以上までストレスなく一気に駆け上がる。天下一品の快楽エンジンだ。
フェラーリはこのドーディチ・チリンドリをロードカーラインナップの核心に据えている。ピュアなスポーツカーであると同時に豪華なクルーザーでもあった。リトラクタブルハードルーフを持つスパイダーは爽快なオープンエアドライブはもちろん、至宝のV12サウンドをダイレクトに楽しむことができるという点でクーペより魅力的かもしれない。ルーフの開閉はもちろんワンタッチ電動で行われ、開閉に要する時間はわずかに14秒前後。時速45km以下であれば走行中の操作も可能だから、天候の急変などでも慌てることなく対処できる。ツインコクピットスタイルのインテリアデザインも秀逸。