BREGUET MANUFACTURE

精緻を極めたブレゲの手仕事

September 2020

 

 エングレービング部門にも、目を見張るような工程があった。20名ほどの職人が働くアトリエでは、ダイヤルや自動巻きローターなどにさまざまなモチーフが彫金される傍らで、女性職人がムーブメントに向き合い作業をしていた。彼女は、ムーブメントの一つひとつにロゴを彫り込んでいたのだ。一部の高級ムーブメントは、シリアルナンバーまで手で刻んでいるのだという。現代のブレゲが、初代から受け継ぐ手仕事を、隅々にまで行き渡らせている、ひとつの証し。美の追求に、手間と時間を惜しまない。

 

 

左:手作業で面取りされたスケルトン トゥールビヨンのエッジを、この職人は木の棒を使って鏡面仕上げしていた/右:ムーブメントにBreguetの文字をハンドエングレービング。顕微鏡を覗きながらの微細な作業だ。

 

 

  伝統的な手仕事がかなえるブレゲの時計の優れた美観を、そのオーナーが最も日常的に感じられるのが、ダイヤルである。そして多くのモデルのダイヤルに施されるギヨシェは、初代ブレゲが初めて時計に用いて以来、メゾンのアイコンになっている。そのアトリエは、まさに圧巻。実に27台ものギヨシェ旋盤が居並んでいるのだから。他社のほとんどが、ギヨシェをプレスに置き換えているのに対し、ブレゲは19世紀当時と変わらぬ手彫りの伝統を守っている。同じく手彫りギヨシェを受け継ぐメーカーもあるが、旋盤の数はせいぜい数台程度。これほどの数の旋盤が並ぶ工房は、他にはない。

 

 

本記事はISSUE12(2016年9月24日発売号)にて掲載されたものです。
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