BREGUET MANUFACTURE

精緻を極めたブレゲの手仕事

September 2020

 

 ブレゲ・マニュファクチュールでも最新のCNC工作機械が、正確に地板とウケとを切削加工していた。軸穴もやはり同時に加工されているが、切削後にさらに金型によるプレス加工をするのが、他社にはないブレゲ流。こうすることで、特に軸穴の加工精度は飛躍的に上がり、組み立て後のムーブメントの駆動をスムーズにし、高品質化しているのである。

 

 その組み立ては、専門の職人による手作業だ。ここでもブレゲ流が見て取れた。彼らの作業台には、ネジを回し進めて一定の締め付けに達すると空回りするトルク・ドライバーが、何本も並んでいたのだ。各ドライバーは、最大締め付け値が異なり、職人はネジごとに指示されたドライバーを用いて、作業に当たる。こうすることで、設計者が計算した通りの最適なトルクで、すべてのネジが締め付けられることになる。ムーブメントをより高品質にするための、独自の工夫だ。また各作業台の頭上には空気清浄機が設置され、クリーンな環境が整えられていた。

 

 

ムーブメント組み立て部門。作業台の上に設置されているのが空気清浄機で、ホコリのないクリーンな環境で作業を進める。他社では見られないほどの数のトルク・ドライバーが職人に与えられ、図面の指示通りに使い分け、的確なトルクでネジを締めつける。

 

 

 厳格な工程管理による高品質に加え、優れた美観もブレゲの特徴である。各パーツの仕上げや装飾部門には、大きなスペースが与えられていた。そしてドライバーひとつまで指示される組み立て部門とは異なり、仕上げや装飾部門では、多くが職人の裁量に委ねられている。仕上げの責任者曰く「求められる仕上げレベルにまで達しさえすれば、プロセスは関係ない」。

 

 だから例えば面取りしたパーツのエッジの最終仕上げでは、木の棒を用いる職人もいれば、樹脂を愛用する職人もいる。それぞれが最もやりやすい道具を使っているのだ。それゆえ仕上げのレベルは同じでも、用いる道具や職人のクセで、素人目には区別ができない微妙な差異が生じると、責任者は言う。「だから、ほぼすべてのパーツが露わになるスケルトンは、ひとつのムーブメントに対し、ひとりの職人がすべて仕上げています」。このスケルトンの肉抜き作業も、機械化しているメーカーが多い中、昔ながらの手作業で行っているのがブレゲらしい。

 

 

本記事はISSUE12(2016年9月24日発売号)にて掲載されたものです。
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