February 2021

What is NEW LUXURY? vol.04

キーパーソンに訊いた、これからの
“ニューラグジュアリー”とは? vol.04

text & direction yoshimi hasegawa
photography daisuke akita

KEY PERSON 04
西口 修平氏
良い洋服とは何かクラシックの新提案

Nishiguchi Shuhei / 西口 修平1977年、大阪府に生まれる。学生時代、古着を販売する中でクラシックメンズウェアの魅力に目覚め、ビームスに入社。関西で約10年間セールスとして働き、バイヤーに抜擢。ビームスFディレクターに就任し、現職。インスタグラムのフォロワーは11.9万人、日本を代表するウェルドレッサー。著作『NISHIGUCHI’SCLOSET』を出版、現在第2弾にむけて始動中。

今までどの媒体にも見せたことのない自分を見せたいという思いから、今回メディア初公開となったナポリのサルトリア・ダルクオーレによる4ボタン、ダブルブレスティッドのスーツ。シャツはビームスF。タイはヴィンテージのジバンシィ。ヴィンテージ(古着)も自己のオリジナルなクラシックスタイルの一部ととらえている。靴はジョンロブ。
「生産背景や飽くなきモノ作りへの探究心、仕立ての良さ、素材の良さ、こうした観点からハンドメイドに限らず、名品は存在します。これらの名品を求めて、世界各地でのバイイングを行っています」

 西口氏にとってのニューラグジュアリーとはなにか。それは「良い洋服を着る」ことに行き着くという。

「自分は生粋の洋服屋です。洋服貧乏でしたし、何よりも服が好きで、20代の頃は精一杯背伸びをしてアットリーニのスーツを着ていました。今、ちょうど洋服が自分自身のライフスタイルに追いつくタイミングが来ている気がします。高価な高級品が必ずしもよいというわけではなく、良い洋服を着ると背筋が伸びて、所作が変わり、自分がなりたい自分になっていく。こうした意味で良い洋服を着ることこそが私にとってのラグジュアリーだと改めて実感しています」

 では、良い洋服の定義とは何だと考えているのだろうか?

「素材や仕立てがよく、体にフィットしていること、古臭く見えないこと。正統的でエターナルなものです」

いつの時代になっても着たい、小学校高学年で買った最初の1本から20本近く所有しているリーバイス501は永遠の定番。XXを含む、50年代、60年代、90年代のヴィンテージ、リーバイス501のコレクションのうちの3本だ。

 益々カジュアル化が進む日本の現状で、果たして今後もスーツは必要とされるのだろうか?

「絶対に必要だと信じていますが、着方は変わってくるでしょう。ユニフォーム的なビジネススーツは間違いなく弱くなる。いわゆるジェットセッターのような機能性素材、ウェストがドローコードになったものなど、カジュアルなスーツの方に流れるのは目に見えた状況です。それとは別に、遊びで着るスーツがでてくる。休みの日には大人の男性がカジュアルで優雅に装うことができるスーツスタイル、スーツはこんな風に遊べるんだというスタイル提案をしたいですね」

 アパレル業界では常に新しい打ち出しをし、トレンドを作ってきた。その一端を担っていることに関しては責任も感じている。

「お客様からは次は何が流行るのかと聞かれます。サスティナビリティに関しては供給過多とCO2排出が問題になっている。たくさんオーダーして、たくさん売る、セールで売る、その慣習を見つめ直すタイミングに来ていると思います。

 根本的にクラシックは天然繊維を使用しているため、孫まで着ることのできる最もサスティナブルなもの。今後、個々に本当に必要なものとそうでないものの区別がより明確になっていくでしょう。本当に良いものだけ、自身のライフスタイルに合ったものを提案する。今までの流れを変えるような提案をしていきたいと思っています」

50年代のアメリカのクラスリング、100年前のイギリスのヴィクトリアンリング、バーニー(現行品)など、アクセサリーはクラシックウェアに自分らしさを加える存在。エルメスとトゥアレグのバングル。時計は究極にミニマルなデザインが気に入っている60年代のヴァシュロン・コンスタンタン。

本記事は2020年11月25日発売号にて掲載されたものです。
価格等が変更になっている場合がございます。あらかじめご了承ください。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 37

Contents