WAKO : PAST, PRESENT AND FUTURE

日本の伝統を刻み続けるセイコーと和光物語

April 2022

text yoshimi hasegawa

左:1930年当時の精工舎全景。1923年の関東大震災により工場や営業所は全焼したが、懸命の努力により復興したもの。生産設備の近代化を図った。1937年には腕時計部門専用の子会社「第二精工舎(亀戸)」を設立したが、第二次世界大戦により民間用時計の生産は停滞。戦災で被害を受けた第二精工舎に代わり、疎開先の諏訪の工場では生産をいち早く再開し、後の諏訪精工舎(現セイコーエプソン)となった。右:初代グランドセイコーに付けられた歩度証明書。厳格な精度に対する信頼性の証となった。

 さらにクオーツショックから20年以上を超えて、高級機械式時計が再評価の時を迎えると、グランドセイコーの機械式時計が復活した。スイス・クロノメーター優秀規格より厳格な「新GS規格」採用のムーブメント9S5系を搭載している。

 この後、2006年には動力ぜんまいを改良し、72時間のパワーリザーブを持つキャリバー9S6系が登場。2009年には動力ぜんまい、ひげぜんまい、脱進機すべてを一新した自動巻き10振動ムーブメントのキャリバー9S85が41年ぶりに登場。2014年にはこれをベースにしたGMT付きの新たなキャリバー、9S86(メカニカルハイビート36000GMT)の限定
モデルがジュネーブ時計グランプリ「小さな針」部門賞を獲得。世界標準で絶え間ない技術革新を続けている。

 この進化に合わせ、和光は2021年4月に「5つのお約束」を発表した。その内容は、すべてにストーリーを持つ製品であること、本物であること、サプライズがあること、一生付き合えるストアであること、そして「銀座の街」と社会と共に歩むことである。

 歴史が培った選択眼と顧客へのホスピタリティは今も大きな信頼の証となっている。良品は必ず顧客の愛顧を得るとした服部金太郎の信条は今も継承されている。

 同じく2021年の12月、セイコーホールディングスは2022年に90年を迎える和光本館を一部改修し、「SEIKO HOUSE GINZA」とすると発表した。和光本来の姿はそのままとし、ゲストラウンジやホールなど多目的に顧客をもてなす設備が加わる予定だ。

 創業者服部金太郎の哲学は新時代のランドマークへ向け、和光と共に発展を続けている。

人気の和光限定グランドセイコーグリーンの文字盤を持つグランドセイコー ヘリテージコレクション和光限定モデルはわずか限定60本製作の希少モデル。シリアルナンバー入り。グランドセイコーを代表する10振動ムーブメントキャリバー9S85。外部からの振動に強く携帯時に安定した性能はそのままにGMT機能を付加した自動巻き(メカニカルハイビート36000GMT)、キャリバー9S86を搭載。文字盤の放射パターンとグリーンカラーは、9S系メカニカルムーブメントを一貫して生産する「グランドセイコースタジオ 雫石」のある岩手県の県木ナンブアカマツの松の葉を、第二時間帯を示す赤いGMT針はアカマツの幹をイメージしている。ステンレススチール、シースルーバックの直径40mmのケースはセイコースタイルを確立した通称44GSの現代モデルをベースにデザイン。ザラツ研磨などセイコーの技術の結晶だ。マットな質感のミディアムグレーの革ベルトが付属する。10気圧防水。和光が支えてきたグランドセイコー製造の歴史を体現した限定モデルだ。¥814,000 Grand Seiko/Wako(銀座・和光 Tel.03-3562-2111)

本記事は2022年1月25日発売号にて掲載されたものです。
価格等が変更になっている場合がございます。あらかじめご了承ください。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 44

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