TOUR DE TIME
旅時計の先駆者
―パテック フィリップ―
December 2020
photography jun udagawa
(左)ワールドタイム 523010時位置のプッシュボタンを押すと、時針、24時間リング、都市表示リングがすべてジャンプ。12時位置に現在地のタイムゾーンに属する都市を動かせば(写真ではLONDON)、あとは都市と24時間リングの数字、分針を組み合わせることで、世界中の時間がわかる。ちなみに東京は19:08。ダイヤルの中央には、精緻なギヨシェ彫りが施されている。自動巻き、18KRGケース、38.5mm。¥5,440,000 Patek Philippe(パテック フィリップ ジャパン・インフォメーションセンター TEL.03-3255-8109)
(右)ワールドタイム・クロノグラフ 5930前ページに掲載している1940年製のクロノグラフ×ワールドタイムモデル「Ref.1415 -1 HU」にインスピレーションを受けて生まれたモデルで、切れの良いラウンドケースに、ふたつの機構をバランス良く搭載した。クロノグラフの積算計を6時位置の30分計のみにすることで、美しいギヨシェ彫りもしっかり楽しめるようにしている。自動巻き、18KWGケース、39.5mm。¥8,280,000 Patek Philippe(パテック フィリップ ジャパン・インフォメーションセンター TEL.03-3255-8109)
ワールドタイムは古典的な機構だが、その一方で、よりシンプルで読みやすい実用的な機構も人気が高い。「トラベルタイム」機構は、旅客機の性能が向上し、世界を旅するジェットセッターが増えた1960年代に生まれる。
ホームタイム(自国の時間)とローカルタイム(現地の時間)を機能的に表示する旅時計で、パテック フィリップの場合は、ケースサイドにある10時位置のプッシュボタンを押すとセンターの時針が後退し、8時位置のボタンを押すと前進するという仕組み。旅先に着いたらプッシュボタンでローカルタイムに針を合わせれば時差修正は完了。カレンダーはローカルタイムに合わせて動くので、日本→ハワイのように日付変更線をまたぐ場合は、カレンダーの逆行もできる。しかもローカルタイム時針を動かしても、スケルトンのホームタイム針は動かないので、夜中に連絡して顰蹙(ひんしゅく)を買う心配もない。視認性と操作性に優れるトラベルタイムは、現代的な実用機構といえるだろう。
残念ながら昨今の社会情勢では、海外旅行をすることは難しい。しかし旅の雑誌を眺めたり、旅行記を読んだり、インターネットで旅の情報を検索したりするなど、頭の中で旅をするのは自由だ。今日はワイキキのカピオラニ公園でのんびりランチを楽しみ、明日はミラノのガレリアでウインドウショッピング。明後日はオークランドのイーデンパークでラグビー観戦―。イマジネーションの翼を広げたとき、傍らに旅時計の歴史をつくってきたパテック フィリップの時計があれば、旅への想いはより高まるはず。いつか自由に旅ができるその日まで、旅時計と一緒に想像上の旅を楽しもうではないか。
本記事は2020年11月25日発売号にて掲載されたものです。
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THE RAKE JAPAN EDITION issue 37
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