TO VICTORY!

オールドスクールを愛する稀有な存在:俳優 クリス・パイン

January 2023

text tom chamberlin
photography kurt iswarienko
fashion direction grace gilfeather

イブニングジャケット、シャツ、ボウタイ、トラウザーズ all by Huntsman
チーフ Budd Shirtmakers
カフリンクス property of stylist

ハリウッド育ちのサラブレッド パインはカリフォルニアの芸能一家に生まれた。母方の祖母はハリウッド女優のアン・グウィンで、両親もともにハリウッド俳優(父=ロバート・パイン、母=グウィン・ギルフォード)である。パインは高校卒業後、カリフォルニア大学バークリー校に進んだが、在学中に1年間休学して英国のリーズ大学で学んでいる。我々英国人から見れば、年中陽射しが照りつけるカリフォルニアのキャンパスライフを、なぜわざわざ英国の工業都市での生活と交換しようというのか理解できないところだが、どちらにいても隣の芝生は青いということかもしれない。

「リーズへ行ったのは19歳のとき。僕がそこで学べることは大きかった。社会生活から北国の文化、学問に至るまで、リ育ったにしては変わった方法で演技のスキルを磨いた。それは演劇である。

「アメリカのパフォーマンスカルチャーは、まずロサンゼルスに来て映画かテレビの俳優になるということで成立している。でも僕はたまたま舞台を通して演技に触れたから、演劇が活動の原点なんだ。そもそも映画俳優になりたいとは思っていなくて、純粋に演じることが好きだった。だから学生時代も卒業後も、数多くの舞台公演をやったよ。観客の前の舞台に立つことで得られるエネルギーが大きかったからね。演劇から役者を引き離すのは、主にお金の問題。ブロードウェイで大成功を収めない限り、金銭的な報酬の格差はかなり大きいよ。それに舞台公演はすごくハード。週に8公演、ときには1日2公演やるんだからね」

THE RAKE JAPAN EDITION issue 50
1 2 3

Contents