May 2021

THOSE MAGNIFICENT MEN

素晴らしきヒコーキ野郎たち

その部隊は飛行を趣味とする貴族や富豪の集まりで、特権と自由な時間をほしいままにしていた。
しかし第二次世界大戦が勃発すると、彼らは自前の機体で戦場へ飛び、命を懸けて戦った。
text nick scott

第601飛行隊のパイロットたち。1941年1月、ロンドン西部のノースホルト王立空軍基地にて。

 1925年にノースホルト王立空軍基地で設立されたイギリス空軍第601飛行隊は、戦争が始まらなければ単なるエリート部隊だった。兵士たちは、イートン校出身の飛行家エドワード・アーサー・グロブナー卿(初代ウェストミンスター公爵の息子)に召集された者たちで、ホワイツ(メイフェアの名門クラブ)のメンバーばかりだ。

 グロブナーは、朝食前にマルサラワインをがぶ飲みするのが好きな豪快な男だった。地上ではシルバーのトップがついたステッキを持ち歩き、所有する2機のブレリオ単葉機のキャビンにはジェームス・パーディ&サンズ社特注のソードオフ・ショットガンを置いていた。第601飛行隊の元パイロット、トム・ムールソンはこう語る。

「彼は真の勇気を持つジェントルマンの中から士官たちを選んだが、彼の大好きな娯楽、つまり食べること、飲むこと、ホワイツでの時間にとことん付き合えることも重要な条件だった」

 最初の航空幕僚長のトレンチャード卿はおそらく、戦争が勃発した場合に配備できるアマチュア・パイロットによる補助部隊のような形を考えていた。だからといって彼が酔っぱらいの入隊を認めたとは思えないのだが……。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 39
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