THE SOUND OF TIME
―Patek Philippe パテック フィリップ―

限られた者だけが
手に入れられる“音”

June 2021

text tetsuo shinoda

ミニット・リピーター 5078渦巻き模様とアラベスク模様を組み合わせたブラック七宝のダイヤルを持つ、工芸品のようなミニット・リピーターウォッチ。熟練職人による手仕事から生み出された、マットと光沢感のある仕上げの組み合わせにより、黒の中にも繊細で美しい立体感が見事に生まれている。複雑機構を搭載しているにもかかわらず、ケースの厚みは10.18mmとかなり薄型なため、エレガントに楽しめる。自動巻き、18KWGケース、38mm。価格要問い合わせ Patek Philippe(パテック フィリップ ジャパン・インフォメーションセンター Tel.03-3255-8109)

 そんな忘れられた機構が復活したのは1989年のこと。創業150周年の節目を迎えることを期に、30年近く途絶えたこの伝統的な機構を改めて研究し、再び現行の時計コレクションに加えたのだ。

 パテック フィリップがこの機構を復活させるにあたって、何よりも重視したのは“音質”であった。メカニズム自体は過去の経験を生かすことができても、ゴングとハンマーで音を鳴らし、ケース内で反響させて響かせるためには、素材だけでなく、叩く位置や強さ、あるいは反響するスペースなどさまざまな要因が関わる。しかも数百というパーツの集合体であるため、パーツの微差が音質にも影響を与える。そういった不確定要素をすべてクリアし、理想の音に近づける作業は、もはや楽器作りに近いといえる。

 現在のパテック フィリップでは、高度な技術で調律した後、同社社長であるティエリー・スターン氏の耳で最終確認が行われ、OKが出たものだけが製品となる。歴史と伝統を重んじた美しい時計は必ず人の手から生まれるが、パテック フィリップのミニット・リピーターは手と耳から生まれる。それはとてもロマンティックな物語であり、だからこそ心待ちにする人々が途切れることがないのだ。

ミニット・リピーター 5178ブレゲ数字のインデックスや40mmというケースサイズによって、アクティブな雰囲気も演出した1本。クリーム色のダイヤルはグラン・フーエナメル製で、深みのある光沢感が特徴だ。通常のゴングより倍の長さがある「カセドラル・ゴング」を使っているため、より重厚で余韻のある音色を響かせる。自動巻き、18KWGケース、40mm。価格要問い合わせ Patek Philippe(パテック フィリップ ジャパン・インフォメーションセンター Tel.03-3255-8109)

本記事は2021年3月25日発売号にて掲載されたものです。
価格等が変更になっている場合がございます。あらかじめご了承ください。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 39

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Contents

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