THE RAKE ON NEW LUXURY 02
サルトリア文化の成熟が生んだ新潮流
ビスポークコートをカジュアルに楽しむ
December 2020
SARTORIA CORCOS気品あるフィレンツェ伝統のコート
(左)Caban/(右)Collo Bastardo
サルトリア フィオレンティーナは独特のコート文化を築いていて、その中でよりフィレンツェらしいコートをふたつあげるなら、“カバン”と呼ばれるピーコートと、“コッロ バスタルド”と呼ばれるセミピークトラペルのシングル仕立てコートだろう。カバンに関してはタイ・ユア・タイのフランコ・ミヌッチ氏がジュゼッペ・セミナーラ氏にカシミア素材で仕立
ててもらってよく着ていたことから同素材が定番で、かつてセミナーラで修業していた宮平康太郎さんが仕立てたこちらも、カシミア100%。右のコッロ バスタルドもまたマイアーノやセミナーラでよく見られたデザインだ。こちらは逆に粗い感じの素材感で仕立てることが多いというが、ビキューナで仕立てたRAKISH MANもいて、それもアリだ。新規の方のオーダーはストップしていたが、来年からは予約の方のみ受注を再開予定(予約はcorcos@sartoriacorcos.com)。左:カバン¥400,000~(オーダー価格。写真のカシミアは¥500,000)、右:コッロ バスタルド¥400,000~(オーダー価格) both by Sartoria Corcos
Kotaro Miyahira / 宮平康太郎1982年、大阪府生まれ。16歳でセレクトショップの販売員、リングヂャケットの貝塚工場を経て、2004年にフィレンツェに渡る。サルトリア セミナーラで4年、フランチェスコ・グイーダ氏のもとで3年、その間ナポリにも通って修業を積み、2011年1月、フィレンツェに工房を構えて独立し、サルトリア コルコスを始動。
ナポリを中心としたイタリアのサルトリアに通い始めてから20年近くが経つが、オーダーを重ねていく中でなんとなく自分なりのオーダーの仕方ができてきたし、まだまだそんなことを言うにはおこがましいが、経験者の目線でいろいろ見えてきた部分がある。
スーツやジャケットをシーズンごとに仕立てるのは、それは人生における大きな楽しみなのだが、実はコートを仕立てるときはさらなるワクワク感があって、ビスポークでコートを仕立てることほどエキサイティングなことはないのでは、とすら思い始めている。
これは富裕層の顧客を抱えているトップサルトリアで顕著なことなのだが、チェスターやアルスターやポロコートなどをひと通り仕立てた客は、カジュアルに、スポーティに着られるコートに向かい、さらなる深淵なビスポークの世界を楽しんでいる。有名どころのサルトリアには、そういったスポーティなコートの仕立て途中のものや完成品がほぼ必ずハンガーにかかっている。そのデザインはサルトリアごとに個性があって、多種多様で実に面白い。
長年オーダーを重ねてきた日本人のあいだでも、ここ2〜3年、スポーティなコートの需要が一気に高まっている。今の社会状況の中でスーツを着る機会が減ってテーラーから足が遠のいてしまった読者の皆さん、カジュアル&スポーティにも楽しめるショート丈のビスポークコートならより多様なシーンで着られるし、オーダーのし甲斐があるのでは? これはニューラグジュアリーになるんじゃないかなと確信している。
SARTORIA PANICO
Caban
ナポリ的軽やかさと
巨匠パニコの風格服飾評論家の池田哲也氏がナポリのアントニオ・パニコでオーダーした、ふんわり軽やかなカシミアアンゴラ素材で仕立ても大変軽やかなパニコ流アレンジによるカバン。パニコ氏のサロットにはこれに限らず顧客のライフスタイルに沿ったリクエストを彼独自の解釈で仕立てた服が何着もあり、そういったオーダーが多いことを窺わせる。クルマの運転の際も脱ぐ必要がないし、合わせる服も選ばないので、大変重宝する一枚だ。Sartoria Panico
SARTORIA SEMINARA
Caban
フィレンツェ伝統の
ピーコート“カバン”セブンフォールドの加賀健二氏がフィレンツェのジャンニ・セミナーラ氏に2018年に仕立ててもらった、ヘビーウェイトのヘリンボーンウールによるカバン(ピーコート)。先代のジュゼッペ・セミナーラ氏が好んで仕立てていたこともあり、とても人気のあるモデルだ。フランコ・ミヌッチ氏はこれのウールカシミアを好んで着ている。丸みを帯びたワイド襟とチェンジポケット仕様というところが非常に愛らしい一着となっている。Sartoria Seminara(サルトリア セミナーラ Email: info@sartoria-seminara.com)
PECORA GINZA
Stalker Coat
ポロよりスポーティな
ストーカーコートペコラ銀座の佐藤英明さんに長く仕立ててもらっている方たちの服を見せてもらうと、生地の雰囲気によってカットが異なり、佐藤さんのイタリア人的な味わい深さを感じさせられる。引き出しの広さはコートも同様。アルスターやポロコートよりもカジュアルに着られるコートとしてお気に入りなのが、4つのポケットが付いた、猟師を意味するストーカーコート。¥400,000~(オーダー価格。写真のロロ・ピアーナのカシミアは¥700,000) Pecora Ginza(ペコラ銀座 Tel.03-3535-6465)
本記事は2020年11月25日発売号にて掲載されたものです。
価格等が変更になっている場合がございます。あらかじめご了承ください。
THE RAKE JAPAN EDITION issue 37
Contents
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Tuesday, February 9th, 2021
Monday, February 8th, 2021
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Friday, February 5th, 2021
Thursday, February 4th, 2021
Sunday, January 31st, 2021