THE GRITTI PALACE : RESTORER OF THE SOUL
ヴェネツィアが誇る名ホテル
楽しき、グリッティ パレス
May 2019
photography rian davidson
special thanks to The Gritti Palace
ヴェネツィアの街を貫く大運河、カナル・グランデ。多くのボートやゴンドラが行き交う。グリッティ パレスは、この美しい運河に面して建てられている。
“Ciao, ragazzi, come va? Andiamoa Gritti!”「チャオ、皆さんお元気ですか? グリッティへ行きましょう!」
これが熱烈なファンの口にするスローガンだ。グリッティ パレスはただのホテルではない。豊かさと好みがどんどん二極化しつつある世界において、真に優雅な少数の人々が利用する隠れ家なのだ。身体と心と魂を回復させる必要があるとき、グリッティ パレスより強力な蘇生器は存在しない。バー・ロンギ、ヘミングウェイ・スイート、リーヴァ・ラウンジの常連にとって、グリッティ パレスは神々の飲む酒“ネクタル”なのだ。
ローレン・キング氏に初めてお会いしたとき、私は間もなくヴェネツィアに滞在すると言った。するとキング氏は、眉を上げて「グリッティ?」との言葉を発した。私が肯定した瞬間に、われわれはきっといい友人になれると確信した。キング氏は、「総支配人のパオロ・ロレンツォーニ氏によろしく伝えてね。グリッティは私にとって幸せな場所なの」と付け加えた。
ハリウッドの名士であり、監督であり、作家であり、世界でも指折りにエレガントな男性でもあるポール・フェイグ氏も、「妻と私は毎年のように大みそかをグリッティで過ごすんだ。新たな1年を迎えるのに、あれ以上の場所はない」と話した。
ロレンツォーニ氏はTHE RAKEを一種の社交クラブ・マニュアルとし、グリッティの各部屋に置いてくださっている。グリッティは、本誌を創刊する際にインスピレーションとなったヘミングウェイ、サマセット・モーム、エリザベス・テイラー、バート・ランカスターが行きつけにしていた場所だ。そこに本誌が置かれるとは、何と光栄なことだろう。だが最近、私はふと気が付いた。ロレンツォーニ氏の舵取りのもとで実現したグリッティのリニューアルを記事にしたことがないと。そこで威厳あふれる総支配人のお時間を頂戴し、話を聞かせていただくことにした。
威厳ある佇まいのグリッティ パレス総支配人、パオロ・ロレンツォーニ氏。