The British Bespokes vol.3

英国ビスポークシューメーカーとの一問一答

January 2020

text yoshimi hasegawa
photography james holborow

Carréducker
カレダッカー
2人だから作っていける
ともに英国ハンドソーンの靴作りを学んだ2人、デザイナーのデボラ・カレ氏とシューメーカーのジェームズ・ダッカー氏により創立されたカレダッカー。スクールも開講し、靴業界に旋風を巻き起こすユニークな活動を追う。

 カレダッカーの名を知らずとも、三つすべてのロイヤルワラントを持つ格式高い両店、ロンドンのギーヴズ&ホークスと銃メーカーのパーディー、彼らと提携しているビスポークシューズメーカーといえば、その実力は想像がつくだろう。

 数々の賞も受賞している彼らの靴はデザイン・ミュージアムのパーマネント・コレクションにも収蔵されている。

 QEST(クイーン・エリザベス・スカラシップ・トラスト)を受け、ハンドソーンの靴作りを学んだデボラ・カレ氏(以下D)が主にデザインを担当。ジョンロブで修行を積んだジェームズ・ダッカー氏(以下J)は靴製造を手がけ、ロンドン北部にあるショールーム兼スクールでは、シューメイキングスクールと靴作りのシンポジウムなどを開催しているという。

新たなシューメーカーの形―まず、カレダッカーの靴について教えてください。

J:「2004年にハンドソーンの英国靴メーカーとして創業しました。今はビスポークだけでなく、構造はビスポークと全く同じですが、底付けを機械で行うリーズナブルなビスポーク・マヌファクチャードとビスポーク、双方を用意し、他にMTOと既製靴も販売しています」

D:「ギーヴズ&ホークスとパーディー、スーツ用のクラシックな靴とカントリーウェア用のブーツ、さらにライニングなしのスリッポンなど、私たちはあらゆるデザインに対応できます。できないものはありません。その強みを生かし、お客様がカジュアルにも使えるモダンなデザインも手がけています」

―シューメイキングのスクールもあるるそうですが、どんな内容ですか?

D:「約200工程あるハンドソーンの英国靴の製造方法を学ぶ内容で、パターンメイキングからワークショップまで、ビギナーからプロフェッショナルに向けた異なるコースがあります。マスタークラスではノルウェイジャン製法やベヴェルドウエストを学ぶコースも行っています」

―どんな方が受講されるのでしょう?

D:「ショートコースはビスポークのお客様が多いですね。構造やレザーのクオリティを深く学びたいという方が多いのです。プロのコースは海外からシューメーカーが学びに来ることもあります」

―そもそも、スクールを始めた理由は?

J:「私は幸運にもジョンロブで学ぶことができたわけですが、以前からビスポークの靴作りを学ぶ機会はほとんどないことに気がついていました。大抵は見習いで働き始めるケースがほとんどですが、研修できるかは店の空き次第。店の数も限られていますし、学ぶことは難しい。私たちが職人の育成や次世代への技術の継承ができれば、この業界への貢献にもつながるのではないかと思っています」

カレダッカーの個性とクラフツマンシップが遺憾なく発揮されたクロコダイルレザー、ストレートチップのキャップトウ。ブラウンのソールとヒールでモダンな表情に仕上げている。

異素材使いとデザインの妙で洗練されたダービーとなる。

ライニングを使わないスリッパのような軽快な履き心地の一枚革のスリップオン。通気性と肌に触れる安全性からベジタブルタンニングのレザーを使用。

ショーディッチの工房兼スクール。近隣に工房がある。

Carréducker
カレダッカー
50 chocolate Studios, 7 Shepherdess Place
London, N1 7LJ
TEL.+44(0)20 3774 3471
www.carreducker.com

THE RAKE JAPAN EDITION issue 30

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