SARTORIA CICCIOに聞いた、100%失敗しないツイード・ジャケットの作り方Q&A

サルトリア チッチオのシグネチャーコート“マニカフォルケッタ”。3枚はぎの袖を持ち、ラグランスリーブにもかかわらず、肩のラインが鋭角に落ちている。オーダーならではのデザインだ。

Q：ツイードのコートで、おすすめのものはあるか？
A：「“マニカ・フォルケッタ”と呼ばれるコートを、重めのツイードで作ることをおすすめしています。私の師匠であるアントニオ・パスカリエッロが得意としていた一枚です。サルトが作るラグラン・スリーブというのは、親方のところで初めて目にしました。マニカ・フォルケッタとはイタリア語で“フォーク袖”という意味で、袖は3枚の布で仕立てられています。独特のパターンを持ち、ラグランなのに肩がスパッと落ちているところが特徴で、これは肩幅を合わせられるオーダーでしか出せないシルエットです。つまり仕立てはソフトなのにシャープに見えるんです。スーツの上から羽織ってもいいし、セーターの上にばさりとやってもいいですね」

Q：一生着られる丈夫な一着が欲しいのだが……？
A：「ツイードというものは基本的に丈夫で、普通のウール地のようにテカったりすることもないので、ちゃんとケアしていけば、もともと一生着られるものだと思います。ジャケットで一番心配なのはひじが抜けることですが、これは前出のエルボーパッチで対処できます。また生地がドライになりすぎて裂けてしまうことも考えられますが、“裂け”というものは基本的に糸目に沿って起こるものなので、かけはぎが効きます。ウチでは万一のためにお納めした服の残布（ざんぷ）を上襟分くらい保管してあります。これは私がテーラーを志すきっかけとなった落合正勝さんの本に書いてあったことなので、しっかりと守っているのですが……。そういえば、イタリアのテーラーでは、そんなことをしているところはないですね（笑）」

ツイード・ジャケットに、ジーンズを合わせた例。ジーンズはリーバイス ヴィンテージ クロージングの501ZXX（アフターアワーズ https://ahours.jp/にて取り扱いあり）、インナーはジョン スメドレー、シューズはイル ミーチョ。

ジーンズはヴィンテージの“赤耳仕様”の505、ニットはスメドレー、シューズは早藤良太氏製作のもの（すべて上木氏私物）。

Q：日々の手入れはどうすればいいのか？
A：「毎日のお手入れとしては、簡単なブラッシングで十分だと思います。ウチではイシカワのビキューナ用を使っていますが、普通のブラシでも、ぜんぜんOKでしょう。クリーニングには出したほうがいいと思います。『仕立て服は、絶対にクリーニングに出さない』という人もいますが、それは昔の話で、今は生地を傷めずに、クリーニングできる技術が確立されています。私自身、毎年シーズンが終わるとクリーニングに出しています。もともと防寒着なので、冬でも汗をかくことがあり、そうすると虫に食われるリスクが高まるからです。しかしプレスが上手なところというのが絶対条件です。おすすめは、港区・高輪の“クリーニング・カラキヤ”で、スーツで3,000円程度と安いにもかかわらず、しみ抜きまできちんとやってくれ、しかもそれが上手なのです。それから究極は、私の出身地でもある福井県にある“ワードローブ トリートメント”です。プレスが上手いことに加え、水洗いとドライクリーニングを両方やってくれるのです。東京なら目黒・青葉台に出店があり、福井の本店に送った後、ハンガー便で返してくれます。スーツで約9,000円と値は張りますが、とてもキレイに仕上がります」

Q：おすすめのコーディネイトを教えてほしい。
A：「基本的には、ツイードの素材感と同じような、表面が粗いものが似合うと思います。フランネルのトラウザーズやスエードの靴、ネクタイもシルクの艶があるソリッドタイなどは避けて、マットな質感のものを選びます。カジュアルで相性が抜群なのはヴィンテージ・ジーンズです。私自身もオフタイムにツイードのジャケットを着る時は、ジーンズと合わせることのほうが多いのです。インナーはニットでしょうか……。ビジネスの場でテーラードを着る必要がなくなってきた今、スーツやジャケットは、好きな人が趣味で着るものになってきています。私もツイードとジーンズの組み合わせをはじめ、いろいろな提案をしていかなければならないと思っています」

スーツ¥580,000〜、ジャケット¥460,000〜、コート¥670,000〜。納期は約半年〜。「扉は重いけれど、入ると優しい（笑）。ご来店時には必ずご予約を」と上木氏。

サルトリア チッチオ東京都港区南青山5-4-43
TEL.03-6443-5567