TALKING 'BOUT A REVOLUTION

輝ける命の刹那 Part 2
激しく駆け抜けた女性たち

March 2021

text david smiedt

1978年のマルダウニー。

 だが、彼女が本音を語る権利を持つほどの実力者だったことは確かである。

ヌードダンサー兼ドライバー エンゲマン、ガスリー、マルダウニーがレースにおける先駆者であったのは間違いないが、能力を疑問視するライバルにたちに加えて、“社会的に容認される”女性らしさの規範に立ち向かった女性の先駆者は、さらに前の時代へ遡る。

 1920〜30年代に、モデル、ダンサー、そしてレーシングドライバーという、その後も例を見ない三拍子を揃えてみせたのが、エレ・ニースである。

 パリから75キロ離れた村で1900年に生まれた彼女は、10代でパリに移り住み、当初はヌードモデルおよびダンサーとして生計を立てた。初めての愛車としてシトロエンを購入したり、1920年代にレースへの参戦を目指したりしたところを見ると、彼女がいずれの職業でも優秀だったことが伝わってくる。

 当時、性別を理由に参戦を認められなかった彼女は、スピードへの欲求を満たすためにスキーに傾倒した。しかし、1929年に雪崩で圧死を避けるためジャンプした際に膝を壊してしまい、ダンスもスキーも断念せざるを得なくなった。

年に一度のセブリング12時間耐久レースにて。左からドナ・メイ・ミムス、ジャネット・ガスリー、リアーヌ・エンゲマン(1969年)。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 38
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