October 2022

SHACKLES OFF

VBCの新しい色、
モロッカンブルーを仕立てる

2022年のビスポーク・メンズウェアを象徴する冒険的なジャケットを作った。
パートナーは、イタリアの老舗生地メーカーVBCと、フランス至宝のテーラー、チフォネリだ。
text tom chamberlin
photography kim lang

トム・チェンバレン(左)THE RAKEインターナショナル版編集長。2015年より同職を務める。ビスポーク・テーラリングをこよなく愛するが、185cmの長身と広い肩幅のため、いつもテーラーを悩ませる。

ロレンツォ・チフォネリ(右)1880年にローマで創業した名門テーラーの4代目。祖父アルトゥーロはサヴィル・ロウで学び、パリに店を開いた。1990年代にファミリー・ビジネスに加わり、2003年に3代目であった父アドリアーノから、いとこのマッシモ・チフォネリとともに経営を引き継いだ。採寸・パターン・製作を担当するカッターとして、来日経験も多数ある。

 ビスポークは楽しくあるべきだ。もし楽しくなかったのなら、お金を返してもらうべきだろう。ここでテーラーの役割は重要だ。テーラーは、お客様に心地よさを感じさせ、顧客というよりもプロジェクトのパートナーとしてあなたを扱うべきだ。信頼感を与え、そしてそのプロセスにおいて、ある程度のショーマンシップを発揮することも大切だ。

 また、クライアントであるあなたは、考えや気持ち、要望をできるだけ伝えるようにすることだ。そうすることで、その服に求められているものが見えてくる。「何が欲しいのかよくわからない」などと言うのは、賢明なアプローチではない。テーラーには何千という生地があるのだから、欲しいものをはっきりとさせておくべきだ。でないと、私がロサンゼルスのスパで体験したようなことになりかねない。

 マッサージのセラピストは男性と女性どちらがよいかなどと聞かれて、「特に好みはない」と答えたら、ボードワックスでガチガチに固まったミットを持ったサーファーが現れて、私の身体をゴシゴシとこすり始めた。それはまるで拷問のようだった。しかしそれは、きちんと好みを伝えなかった私が悪かったのだ。自業自得である。

 しかし、私の最近のオーダーメイドの冒険では、そのような問題はまったく起こらなかった。私はお願いするテーラーと使いたい生地をすでに決めていたからだ。テーラーは私のことをよく知っていて、かつデザインの天才である、ロレンツォ・チフォネリ氏である。

350年以上の歴史を持つ世界で最も古いウール工場のひとつヴィターレ・バルベリス・カノニコ(VBC)と、世界的な色の権威であり色見本を提供するパントン社がコラボした、“PANTONE 19-4241 モロッカンブルー”の生地。2023年秋冬シーズンより展開され、そのクールな色調は私たちを、モロッコの街へのタイムトラベルへと誘う。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 47
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